一人で悩まないで 愛知医大看護学部、岩崎順子・非常勤講師に聞く

介護疲れによる自殺や高齢者虐待が社会問題になっている。どうすれば一人で抱え込まずに、支え合っていけるのか。介護する側とされる側が求めているよりよい介護とは。愛知医大看護学部の岩崎順子・非常勤講師(48)に聞いた。


◇医師やケアマネらが大きな救いに


◇病気の向こうに変わらぬ心


■大切な人だから


病気が治らずに亡くなっても、家族から「ありがとう。このお医者さん、看護師さん、ケアマネジャーさん、ヘルパーさんにかかわってもらえて本当に良かった」という言葉が出てくる時、そのみとりは心と心が響き合ったものだと言えるのではないでしょうか。


病気になったら、本人はもちろん家族も不安でいっぱいです。「早く治って元気になってほしい」「いつまで続くのだろう」。先が見えずに焦ってしまうのは、その方が家族にとって大切な人だからこそ。当然です。


■不安、つらさ


本人や家族はそんな不安な気持ちに寄り添ってくれる人を求めています。「もう嫌だ。死にたい」と言われ、「死にたいなんて言わずに頑張りましょう」と返してしまったら、その人は心を閉ざしてしまうこともあります。本当は死にたいのではなく、「死にたいくらいつらい」という気持ちを誰かに分かってほしいのではないでしょうか。心の底から「生きたい」と願うからこそ出てくる言葉のように思います。


また、家族にこれ以上心配させたくないと、つらい思いを家族にぶつけられない人もいます。24時間の介護に疲れて心に余裕がなくなり、自分自身の心すら見失ってしまう家族もいます。家庭内だけで問題を抱え込むと、がんじがらめになってしまうことが少なくありません。


■気持ちをくむ


そんな時、医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパーの存在がとても重要です。痛みを和らげたり、家の中の張りつめた空気を和ませたり、気持ちをくんでくれることが、大きな救いとなります。


末期がんや認知症、さまざまな病気が原因で本人の姿や言動がすっかり変わってしまったら、家族は「厳格だった父がなぜ」「優しかった母がなぜ」と戸惑います。目に映る姿はたとえ変わっても、病気の向こう側には元気なころと同じ優しい心が存在します。それを一緒に感じてくれる人がサポートしてくださると、うれしいです。


心を込めて介護しても、亡くなることが当然あります。でも、その人が生前見せてくれた生き様や言葉は、ケアした人たちの心の中で、今度は「生きる力」「受け止める力」となって、次のケアに必ず生かされていくと信じています。


■人物略歴


◇いわさき・じゅんこ


夫の死をきっかけに、全国の病院や学校などで講演活動を続ける。05年9月、「ガンが病気じゃなくなったとき」(青海社)を出版。04年から現職。


毎日新聞
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