訪問介護減、満足にトイレにも行けず 男性、和歌山市提訴へ
◇「障害者自立の壁に」
行政の都合で訪問介護サービスの利用時間を大幅削減されたのは不当だとして、重度の障害を持つ和歌山市の男性が近く、市を相手にヘルパー利用時間の見直しを求める訴訟を和歌山地裁に起こす。男性は自宅トイレにも満足にいけなくなり、「生きることを否定されたよう」と訴えている。障害者の支援団体は、06年の障害者自立支援法施行後、「生活実態に合わないサービス内容の決定が全国で相次いでいる」と指摘する。【清水有香】
男性は和歌山市黒田の石田雅俊さん(39)。脳性まひや体幹機能障害で首から下が動かず、常時介護が必要で、4歳から約15年間、施設で生活。一時実家に戻ったが、父親が入院し再び施設に。「規則のない暮らしをしたい」と04年4月、1人暮らしを始めた。
市は月535時間のヘルパー利用を許可。NPO法人「自立生活応援センターわかやま」も月約200時間を無料提供し、24時間介護が実現した。ところが翌年、「浴室にリフトを設置し、入浴時の複数介護が不要」などの理由で、月478時間に削減。さらに07年7月の調査で「深夜に継続的支援の必要性は感じられない」と月377時間に減らした。
生活保護を受けており、市が認める無料のヘルパー利用が頼りのため、買い物や料理のできた生活は激変。くしゃみで体勢が崩れると体を動かせない。トイレに行けず失禁が増え、ヘルパーが来るまで衣服をぬらしたままの日も多く、「水を飲むことすら恐怖」と話す。
市は「全国平均に劣らないサービスを提供しており、時間数は専門家による審査会で決定した」とし、「不足するならデイサービスやショートステイの施設併用を」と勧める。しかし、石田さんは「自立するためのヘルパー利用だったはず」と言い、「好きな時に好きなことができる、自立の道を閉ざさないで」と訴えている。
厚生労働省は「日常生活に支障が出ないよう、適切な量のサービスを支給するよう市町村に通達している」と説明する。だが、障害者の自立を支援する財団法人「たんぽぽの家」(奈良市)の村上良雄常務理事は「自立支援法の施行で自治体の裁量が増え、財政力がないとサービスを限定する傾向にあるのでは。障害者が地域で生活する上で必要な支援をまず考えるべきだ」と指摘する。
◇支援法施行で「不安」広がる
訪問介護サービスの利用時間数は市町村が決めるが、障害者自立支援法の施行に伴い、国は、市町村の定める支給決定基準に基づき、認定する障害程度区分に応じて決めるよう通達。支給時間の超過分は全額自己負担となる。本人の希望時間数と大きく差がある場合は「非定型」として審査会で個別に決定する。石田さんは「非定型」に該当する。
全国の作業所でつくる「きょうされん」(東京都)は06年10月~07年1月、加盟する施設の利用者とその家族を対象に支援法施行後の生活実態を全国調査した。「将来、地域で自立して生活していけるか不安が大きくなった」と答えたのは、回答した2206世帯の48・1%に上った。
毎日新聞
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