超高齢社会へ 「元気老人」を増やせ
超高齢社会といえば、悲観的に取られやすい言葉だが、80歳を過ぎてなお、文化活動の一線で活躍するお年寄りを訪ねた「元気だ万歳」の取材を通じて、決してそうではないと感じた。
県の高齢化率(人口のうち65歳以上の人の占める割合、3月31日現在)は24・6%。近畿で1位、全国では10位で、ほぼ4人に1人が高齢者だ。とくに紀南地方が高く、北山村45・5%、古座川町44・3%、すさみ町38・9%と県のトップ3を占めている。
最高齢は111歳で、100歳以上(本年度中に100歳となる人を含む)は461人(男性55、女性406)いる。一方で6カ月以上寝たきりの人は5528人。高齢者全体の2・1%を占める。「長寿で健康」がこれからの社会の課題である。
取材で出会った高齢者の皆さんはそのお手本。心から人生を楽しんでいる姿勢に圧倒された。
身の回りの素材で毎年、干支(えと)の作品を作ってきた男性(91)は「新シリーズを生み出したい」といい、俳句を毎日1句は詠み続けている男性(90)も「もう1冊句集を作りたい」という。ともに創作意欲は衰えを知らない。
共通するのは、趣味を持っていることだけではない。美人画を描く男性(91)は「いつまでも社会の役に立ちたい」と、作品を障害者自立支援の美術展でチャリティー販売する。和紙ちぎり絵を教えている女性(85)はほかに、健康体操の普及に努め、戦争体験を小中学生に伝えることもある。
趣味を通じて社会と関係を持ち続けていることこそが、心身の健康につながっているというのが取材した記者の実感だった。「老人福祉施設の慰問に行くと、いつも自分が年上」という大正琴奏者の女性(91)のような元気は、そこから生まれるのだろう。
一方で、心配な要素もある。老人クラブの加入率は近年、低下を続けている。自分の趣味には熱中するが、クラブの活動の重要な要素である社会奉仕に興味を示さない60代が増えているという。
老人クラブは地域の高齢者が相互に支え合い、社会貢献に励む自主組織。健康作りや寝たきり高齢者の見守り活動など、存在意義は高まっている。今後、団塊世代の高齢化が進んでいくと、加入の是非はともかく、地域社会との関係が薄れて引きこもりが増え、寝たきり老人の増加へとつながることも危ぶまれる。
文化でもスポーツでも、楽しむのに名人である必要はない。社会奉仕についても難しく考えることはない。好例が串本町潮岬の60歳以上の人たちで作る潮岬ソフトボールクラブである。
これまで団体活動や地域の活動に縁のなかった人々が、練習や試合を通じて交流を深め、海岸清掃など地域奉仕にも積極的にかかわるようになった。影響はほかの世代にも及び、地域コミュニティーの再生に一役買っている。
いつまでも熱中できるものがあり、それを通じて地域に貢献できる喜び。「いまが一番好き」と笑い合える高齢者が増えることが、要介護老人を増やさない最高の対策に違いない。「幸せな人生ですよ」。80歳を過ぎて堂々と言い切る「元気老人」たちが増え続けることを願ってやまない。(K)
紀伊民報
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