徘徊高齢者の位置確認 田辺市、端末を無料で貸し出し
田辺市は、認知症で徘徊(はいかい)して行方が分からなくなる高齢者のため、居場所が分かる全地球測位システム(GPS)の通信端末を無料で貸し出す事業を始めた。老人の未帰宅事案が相次ぎ、予防策を求める声に対応した。
人工衛星を使ったGPSと、携帯電話の基地局を利用して居場所が確認できる警備会社のシステム。端末の大きさは名刺サイズ。位置確認の精度は、誤差5~10メートル程度という。確認できる範囲は、携帯電話(au)の通話地域に限られる。
申し込むとID番号が配られ、端末を持った家族がいなくなると、警備会社に電話で問い合わせたり、パソコンや携帯電話から専用ホームページにアクセスしたりして、探索してもらう。
対象は、65歳以上の徘徊する高齢者を介護する家族で、市民税の非課税世帯の人。要介護度や家族状況を書く利用申請書を出して申し込む。市やすらぎ対策課高齢福祉係(0739・26・4910)で受け付ける。
利用少ない先進地
同係は、市内に認知症の高齢者がどれだけいるか分からないというが、本人が端末を持つことを嫌がったり、核家族化で高齢者だけの世帯も多く、警備会社への連絡が困難だったりで、利用者数がどれだけいるか心配する。様子を見て、利用者がいない場合には、市民税非課税世帯という条件をなくし、対象範囲を広げることも考えているという。
県内では和歌山市が2000年から、田辺市と同様に、市民税非課税世帯か生活保護世帯で、65歳以上の徘徊高齢者を同居して介護する人を対象に支援サービスをしている。利用者負担はないが、現在の利用人数は16人にとどまっている。
上富田町もすでにこの端末システムによる徘徊高齢者対策をとっている。同町の場合、加入料など初期費用7000円を町が負担し、毎月の利用料などは個人で負担してもらう補助制度だが、申請はないという。那智勝浦町でも、利用者に上限1万円を補助する制度を設けているが、利用実績はない。
1年間で24人保護 田辺署
田辺署によると、昨年1年間で、パトロール中や通報を受けて一時的に保護した65歳以上の高齢者は24人(男性13人、女性11人)。今年は6月末現在で14人(男性9人、女性5人)いる。保護した高齢者のほとんどが認知症という。
多くの場合は発見時、疲れ果てた様子で自分のいる場所がどこか分からなくなり、町中の店先や民家の軒先でうずくまっていたり、じっとしていたりするという。
パトロール中に見つかる場合もあれば、近所の人が同じ場所にずっといる高齢者を見つけて心配し、田辺署に通報することもある。すぐに見つかる場合もあれば、2、3日たってから見つかることもある。
中には、他府県で発見された人や漁港に泊まっている漁船の中で見つかった例もあった。交通事故に遭う場合や川に足を滑らせて死亡する場合もあった。
同署は「昔は地域全体で認知症の高齢者を助けていた。全国的に核家族や独り暮らし高齢者が増えているため、今後も行方不明になる高齢者が増えると予想される」と話している。
紀伊民報
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