介護施設業務停止「入居の親どうしたら…」
家族に突然説明会、退去したら「待機」も
巨額の公費がつぎ込まれている介護施設で、ずさんな運営がまかり通っていた。
東京都から14日、全国初の業務停止命令を受けた東京都練馬区の介護老人保健施設「すずしろの郷(さと)」。同施設を運営する医療法人「杏稜(きょうりょう)会」側は13日夕になって施設管理者に医師を就任させると申し出、都福祉保健局では命令を出せるかどうか、ぎりぎりの検討を続けた。施設には72人が入居しており、14日午前の説明会に集まった入居者の家族らは、突然の業務停止に途方に暮れた表情を見せていた。
杏稜会側が医師の資格を持つ人物の履歴書などを提出し、「施設管理者になりうる」と報告してきたのは13日夕。介護保険法は、介護老人保健施設の開設者に、「都道府県知事の承認を受けた医師に施設を管理させる」と義務付けているのに対し、これまで「すずしろの郷」では、施設管理者としての責任を担える医師はいなかった。
杏稜会からの突然の申し出に、この規定を根拠に業務停止命令を出す方針だった都福祉保健局は混乱。幹部が集まり、施設管理者の選出方法についての制度や法令の解釈を午前5時ごろまで検討する事態となった。
その結果、施設管理者は医療法人の社員総会で理事に選出されなければならないのに、杏稜会内部では紛争が続いているため、この医師が直ちに就任できる可能性は低いと判断。業務を継続すれば、入居する高齢者への影響が出かねないとして、既定方針通り、業務停止命令に踏み切った。
一方、練馬区春日町の「すずしろの郷」では、午前9時半すぎから説明会に出席するため、入居者の家族が集まり始めた。
91歳になる母親が入居しているという練馬区内の男性(61)は「今年1月ごろ、職員がどんどんやめていったり、給料が支払われていなかったりといった話があった。でも、その後は経営が持ち直したと聞いていたのに」といい、「今月いっぱいで閉鎖という話もあるが、これからどうしたらいいのか。老人ホームに入れたいが、入所待ちの状態だ」と困惑しきった表情だった。
80歳代の認知症の症状のある父親が入居しているという練馬区内の女性は、説明会開催の通知を前日に郵送で受け取ったばかり。「入居して1年で、ようやく落ち着いてきたところなのに。私も幼い子どもを抱えていて、やっと費用を工面している状態。この先、どうしていったらいいのか」と話し、「もし施設から出ることになるなら、都には許可した責任があるのだから、次の入居先を紹介してほしい。家族も高齢で、どうしようもない事情の利用者もいる」と不安そうだった。
読売新聞
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