多摩地区高齢化(4)地元に特養の“支店”

稲城「サテライト特区」


「お年寄りは住み慣れた地域にいると、表情が明るくなる。せっかくこういう制度ができたのだから活用しないといけない」。稲城市百村にある特別養護老人ホーム「いなぎ苑」の永田穂積施設長は、1週間に一度は市中心部などで“支店”開設の候補地を探している。


同市は今年1月、サテライト型特別養護老人ホームを建設できる特区申請を国に行い、近く認証を受ける予定だ。基本となるのは、昨年6月に同市が提案し、特区として採用された「介護のまちづくり地域システム構想」。国は法改正に着手し、2006年度からサテライト特養は全国で設置が可能になる予定だ。


特別養護老人ホームは一定のスタッフをそろえることなど設置基準が厳しいが、特区になると、“支店”であるサテライト特養は母体の特養ホームと一体と見なされ、設置基準をクリアできる。


サテライト特養では、デイサービスやショートステイなども提供できるため、お年寄りが住み慣れた土地でサービスを受けたり入所したりできる地域密着型の介護拠点になる。稲城市の石田光広・介護保険担当課長は「住民も参加して地域で高齢者を支えることになれば」と期待する。


同市では、サテライト特養を中心に小学生などの交流の場を設け、新たな地域交流を促進する構想も描いている。高齢福祉にとどまらず世代を超えた交流が、魅力ある地域づくりにつながると考えているからだ。


高齢福祉に関する多摩発の特区構想には先例がある。


一昨年11月に多摩地区の13市町村と埼玉、神奈川県の2市が、市町村の介護保険事業計画を超える数の有料老人ホームや認知症(痴呆(ちほう))高齢者のグループホームの設置に歯止めをかけられるようにする特区申請をした。


都心に近く、地価が比較的安い多摩地区には、介護保険制度の開始とともに、こうした施設が次々と建てられた。市町村は将来の高齢者数の推計に基づいて必要な額の保険料を徴収するが、外部からの高齢者が急増して介護保険財政を圧迫していたのだ。


特区申請は国に認められなかったものの、今回の介護保険改革で小規模な有料老人ホーム設置の指定権限が市町村に移管されるという形で実を結んだ。


この特区申請のきっかけは稲城市が市のホームページで提案したこと。それにわずか約1か月で多くの自治体が参加を決めた。同市の石田介護保険担当課長は、「自治体の意思決定としては異例の早さだった。介護保険という地域密着をうたった新制度が、自治体の意識を変えたという面はあると思う」と振り返る。また、ある市の担当者は、「地域に本当に必要なことを国に求めれば、状況は変えられるという自信ができたのでは」と自負する。


急速な高齢化によって、財政、治安などへの不安は確かに大きい。また、近い将来、人口の4分の1近くを占める高齢者が楽しく暮らせる社会づくりも急務。市町村の挑戦はこれからが本番だ。


読売新聞
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