在日コリアン専用施設「けなり」:苦難の歴史を絵に 介護体験の滋賀大生描く
「生活史」柔らかいタッチで--大津
大津市昭和町の在日コリアン専用の通所介護施設「けなり」で、利用者の生活史を絵で表現するユニークな取り組みが行われている。描くのは、介護体験で訪れる滋賀大生。運営するNPO法人「滋賀コリアン生活サポートセンター」理事長の全敬子(チョンキョンヂャ)さん(59)が「若い人たちが在日1世らをどう理解するのかを知りたい」と今年から始めた。学生は話を聞き、想像力を働かせて仕上げる。色鉛筆などの柔らかなタッチの絵が在日コリアンの苦難の歴史を描き出す。【金志尚】
「けなり」には大学生が授業の一環で訪れることが多く、数日間の日程で、歩行補助などの介護体験をする一方、生活史の描写という課題を全さんから与えられる。これまでに学生7人が利用者8人の話を表現した。
このうち、元軍属の姜富中(カンブヂュン)さん(88)=湖南市=の生活史を表現した絵は、滋賀大教育学部の福本明子さん(19)=大阪府茨木市=が今月に描いた。太平洋戦争で海軍に徴用された姜さんは、1945年2月にソロモン諸島で米軍機の機関掃射を受け、親指以外の右手の指を失った。福本さんの作品は、日本の国旗の下に親指のない右手が、韓国の国旗の下に無事だった左手が描かれている。
在日韓国人に対する戦後補償を認めない日本政府に対する怒りと、「いつか戻りたい」と願う祖国への思い……。そんな姜さんの複雑な気持ちが刻まれているように見える。
全さんは描かれた絵を見て、「大学生たちは柔らかい心で、1世たちの話をとらえていて驚いた」という。
8枚の絵からは、それぞれの在日コリアンが歩んだ苦難の道のりや喜怒哀楽が浮き彫りになっており、絵筆を握る学生にとっても貴重な体験となったようだ。姜さんの生活史を描いた福本さんは「身近にこんな方がいると思わなかった。友達に伝えようと思う」と話していた。
毎日新聞
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