高齢者虐待 死亡1件 防止法後初の確認
二〇〇六年度に県内の市町村が認知した高齢者虐待件数は百五件で、うち虐待による死亡が一件確認された、と県高齢者福祉介護課が九日発表した。虐待を発見した者の通告義務などを課した高齢者虐待防止法施行後、虐待による死亡例が確認されたのは初めて。調査では虐待を受けた高齢者(被虐待者)のうち少なくとも53・9%が認知症という結果も出ており、県は今後、認知症と虐待の関係も調査していく。(黒島美奈子)
二〇〇六年十二月、沖縄市内で九十代の男性が介護の放棄・放任の疑いで死亡した。市によると、男性は要介護度5と認定されていたものの、介護サービスは利用していなかった。家族によると、アルコール依存症などもあり病院の受診を勧めたが男性が拒否。放尿、放便などがあり、つめや髪の毛も伸び放題で不衛生な状態だったという。同二十六日重篤な脳梗塞で救急病院に運ばれ、医師から「介護の放棄・放任の疑いがある」と通報があった。男性は翌二十七日に死亡した。
虐待の種類別(複数回答)では、暴力などでけがをさせたり家に閉じ込めるなどの「身体的虐待」が六十八件で最多。次いで暴言を吐いたり無視するなどして精神的に痛めつける「心理的虐待」が四十六件。年金搾取などの「経済的虐待」二十九件、介護を放棄する「放棄・放任」二十八件、性行為を強要する「性的虐待」一件と続く。
被虐待者のうち介護の必要がある人は全体の64・8%に上り、県は「介護者による介護の疲れが虐待につながっている」とみている。
家庭内で起きた虐待のうち、息子による虐待が50%を占め、娘17・6%、配偶者14・7%、きょうだい3・9%、嫁2・9%と続いた。
介護関係の施設内で発生した虐待は三件でいずれも身体的虐待だった。ある有料老人ホームでは、入所する高齢者に殴られたあとやおむつかぶれがあるのを担当のケアマネジャーが発見し、虐待通告。県の指導でこの高齢者は特別養護老人ホームへの移転措置が取られた。
高齢者虐待防止法施行で国は都道府県に対し、施設内で発生した虐待の報告を義務付けている。県はこれに加え今回、家族による虐待の把握を独自で実施した。
だが高齢者虐待相談や対応の窓口は市町村となっていることから、具体的な虐待内容の把握は行わなかった。報道各社からこれを指摘され、県は「今後、調査方法を検討していきたい」と語った。
伊波輝美福祉保健部長は「今回の虐待件数は氷山の一角。虐待が認知されれば、今後増えることが予想される。介護疲れが原因のケースが多いと思われるため、市町村は介護サービスへつなぐ対策が必要」と話した。
能力以上の介護原因 医師指摘
介護者による虐待はなぜ起きるのか。介護に詳しいオリブ山病院運営本部長代行の田頭政三郎さん(精神科医)は「疲れ果てながらも介護する家族の姿は美徳、と考える風潮が社会に根強くあることが原因」とし、介護者の能力以上に介護を強いられた結果、虐待が起きると指摘する。
介護の社会化を目的にスタートした介護保険制度だが、「必要なサービスが受けられない、足りない、情報がない状態が続き、結果的に家族に無理な介護を強いている」と説明する。
認知症と虐待の関係については(1)物忘れ期(2)混乱期(3)寝たきり期―の三段階を経る症状など、「認知症そのものの知識不足が虐待につながっている」とみる。
特に混乱期は「徘徊」や「大声を上げる」などの問題行動が多い。「対応に疲れ果て、または制止しようとして家族が虐待に及ぶケースが多い」
適切なケアを受ければ認知症による問題行動のほとんどは消失するといわれる。
一方、認知症ケアに最適といわれるグループホームの設置が県内で進まないなど、ケアの場が不足している。「在宅介護を支援のためにも、認知症関連病棟やグループホームなどケアの場が必要」と話した。
沖縄タイムス
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