ケア開国:インドネシア介護士/下 受け入れ先、重い負担
◇費用、言葉の壁、宗教面での対応…
インドネシア人の看護師・介護福祉士候補者は、日本語研修を終えた年明けから、各地の病院や施設で働き始める。日本人でも働きながら国家試験に合格するのは大変だが、日本語というハンディを抱えながらの挑戦となる。どうやって合格させるのか。政府の支援は脆弱(ぜいじゃく)で、現場任せの側面は否めない。
「ともかく3年で国家試験に合格してもらわなければならないので、受け入れる私たちも相当な努力が必要だと思います」。東京都八王子市にある永生(えいせい)病院(628床)。看護師候補生2人の受け入れを担当する元看護部長の宮澤美代子相談役(60)はそう言って気を引き締めた。
同病院は介護型療養病床もあるため、最初は介護福祉士候補者の受け入れを考えた。だが、人員配置基準のカウントに算入されず、その分の介護報酬も請求できないため、看護助手に変更した。
インドネシア人を実際に受け入れる看護部は当初、「言葉も十分でなく、育成に時間がかかる」と反対した。国会承認が5月で、書類提出まで2週間もないこともマイナス材料だった。候補者1人あたり、3年で日本語学校や看護学校などに通わせる費用など推定で1000万円程度かかる問題もあった。
宮澤さんはそれを「急に人材が足りないから外国人に来てもらおうと思っても無理。5年、10年先を見通し、今から受け入れ経験と実績を積んでおかないと」と説得した。
ただ、「日本語の壁」への懸念は残ったままだ。永生病院は06年から2年間、フィリピンで歯科医などの資格を持ち、日本語研修も受けた3人の就学生(アルバイト)を受け入れた経験がある。3人は明るく前向きでお年寄りへの対応は問題なかったが、大学卒業レベルとされる日本語検定2級には結局1人も受からなかった。
今回はその上、限られた期間内(看護師3年、介護福祉士4年)に、日本人と同じ国家試験に合格しなければならない。介護福祉士は3年の実務研修が受験の前提で、受験チャンスは1回しかない。宮澤さんは「落ちたら帰国してもらうというのでは我々にとってもメリットがないし、来る方にとっても失礼な話」と話すが、対応は病院・施設任せだ。
語学習得への支援を表明する東京都の担当者は「金銭面だけでなく、受け入れ側の負担が重過ぎる」と話す。
横浜市の特別養護老人ホームは今回、受け入れを見送った。インドネシアはイスラム教徒の比率が9割近いが、宗教への対応も施設任せにしている点が気になったからだ。
イスラム教徒は、個人差はあるが1日5回の礼拝を欠かさない。日中は一切、水分も食事もとらない断食月などもある。知識として知ってはいても、日本人にとっては全くの「異文化」だ。
だが、宗教や生活上の問題が起きた場合も、基本的には各施設の責任で対応することになっている。
インドネシア人を支援するNGO代表で大阪大大学院の松野明久教授は「トラブルが生じてからでは遅い。苦情や相談を受け付ける第三者的な機関が必要では」と指摘する。【有田浩子】
毎日新聞
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