高齢者に「前期」と「後期」

2008年 04月 15日 (火) | Category : 介護ニュース

75歳以上を対象とする「後期高齢者医療制度」。名称への反発が大きいとして、政府が実施初日の今月1日、「長寿医療制度」という通称を急きょ決める異例の事態になった。確かに耳慣れない言葉だが、その由来は?


「あんたはその年になったら、もう人生終わりだよという区切りみたいになって、あまり好ましいうれしい呼び方じゃないと思う」


満75歳の石原慎太郎都知事は4日の記者会見でこう感想を漏らした。


確かに、評判は芳しくない。「失礼だ」「温かみがない」といった声が、制度を運営する各都道府県の広域連合に寄せられている。


もともと、後期高齢者は、75歳で高齢者を区分する老年学の学術用語だ。65~74歳をヤング・オールド、75歳以上をオールド・オールドと二分していたのを、それぞれ、前期高齢者、後期高齢者と訳した。個人差はあるが、75歳になると複数の病気にかかる割合が高くなり、自立した生活が難しくなる。研究対象とする際も、社会政策上も都合が良く、先進国ではこの二分法が定着している。


わが国でも、女性の平均寿命が80歳を超えた1980年代半ば以降、後期高齢者の統計が官庁の白書に登場し始めた。広辞苑にも、98年発行の第5版から収載されている。しかし、当時、「嫌な言葉では、といった意見があった」と岩波書店広辞苑編集部では話す。


現在も、官庁の発表文書や、高齢者関連の記事でもなければ、あまりお目にかかることはない。「役所や関係学会ではごく普通に使っていた言葉なので、厚生労働省の官僚は、深い考えもなしに新制度の名称にしたのだろう」と、慶応大学健康マネジメント研究科の高木安雄教授は指摘する。


年齢はもともとデリケートな問題だ。65歳を高齢者の区切りとすることが多いが、内閣府調査では、高齢者は何歳以上からだと思うかとの問いに対し、60歳以上の3割が「75歳以上」、もしくは「80歳以上」と答えた。「生涯現役という高齢者が増えている。そこに、後期という言葉まで付けたのだから、呼ばれる方はぎょっとしてしまう」と、博報堂エルダービジネス推進室の阪本節郎チーフコンサルタントは話す。


例えば、聖路加国際病院の日野原重明理事長は、75歳以上を「新老人」と呼んでいる。新老人医療制度の方が元気がわきそうなのだが……。(阿部文彦)


読売新聞
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