75歳以上に新医療制度…高齢者、戸惑う春

2008年 04月 02日 (水) | Category : 介護ニュース

周知不徹底「保険料分からない」


75歳以上を対象とした新しい医療保険「後期高齢者医療制度」が1日から始まり、約1300万人が国民健康保険(国保)などから新制度へ移行した。新しい保険料がどうなるのかなど利用者のとまどいは大きい。(社会保障部 阿部文彦、内田健司、政治部 湯本浩司)


「後期高齢者医療制度の仕組みはどうなっているのか」。制度の運営主体となる、全国47都道府県の後期高齢者医療広域連合や、市町村の窓口には3月中旬以降、問い合わせが殺到した。


約100万人の被保険者を抱える東京都後期高齢者医療広域連合には、保険証が利用者にほぼ行き渡った3月17日以降、21日までの5日間で、前週の3倍以上に当たる約2800件の問い合わせがあった。「どうすれば自分の保険料がわかるのか」といった具体的な質問から、「『後期高齢者』という名前の付け方は失礼だ」といった批判まで様々だ。1日には、「新しい制度ではどのように医療費を請求するのか」といった医療機関からの照会も加わり、10台ある総務部の電話は鳴りっぱなしだった。


国保と被用者保険の加入者が、高齢者の医療費を負担する従来の老人保健制度に代わり、後期高齢者医療制度の創設を政府が決めたのは2005年末。75歳以上を独立した医療制度とし、すべての高齢者から保険料を徴収するなどして、高齢者と現役世代の負担を明確化するのが狙いだ。


制度を周知する期間は十分だったはずだが、開始時に問い合わせが殺到してしまった。その理由の一つが、最も関心の高い個々の保険料額が知らされていないことだ。保険料の通知は早くても4月上旬。その前に、見込み額を算出し、通知することは可能だが、実施したのは、ごく一部の自治体にとどまる。2月中旬、約15万人の全被保険者に見込み額を通知した神戸市では「保険料については、ご理解頂いていると思う」(神戸市国保年金医療課)と話す。


制度の複雑さや周知の不徹底も、混乱に拍車をかける。例えば、新たに保険料の支払い義務が生じる、サラリーマンの子どもなどに養われている被扶養者。実際は、激変緩和措置があるため、半年間はゼロになり、4月当初、新たに保険料を支払わされる被扶養者は原則として存在しない。


保険料が国保などに比べて、高くなるのではといった不安も根強い。市町村別に保険料が設定されている国保はもともと市町村格差が激しく、都道府県別に保険料が一本化されると、住んでいる地域によって、増減するケースが出る。


厚生労働省の試算によると、夫(75歳以上)が厚生年金(年205万円)で妻(74歳以下)が基礎年金(79万円)の世帯では、国保の平均保険料が年10・8万円だったが、夫が後期医療に移っても、夫婦あわせた保険料は計10・9万円になる。「全体として、高齢者の保険料負担は変わらない」と厚労省は説明する。


年金から天引きが原則


保険料は、年金額が年18万円以上あれば、原則として、2か月ごとに支給される年金から天引きされる。3月まで国保に加入していた場合は4月上旬に保険料額が通知され、15日の年金支給分から天引きされる。4月に天引きされない人は、6、7月に保険料額が通知される。被用者保険の被保険者本人も6、7月に通知され、9月までは銀行振り込みなど窓口で支払う。


被用者保険の被扶養者には激変緩和措置があり、半年間は免除され、残り半年も9割減額される。初年度の支払額は都道府県により1700円~2540円になる。


「天引き」徴収 野党攻撃 / 首相、「長寿保険」に改名指示


後期高齢者医療制度を、野党側は政府・与党に対する新たな攻撃材料ととらえ徹底的に批判している。


民主党は1日に発表した年金記録漏れ問題に関する党声明で後期高齢者医療制度を取り上げ批判した。現行の医療保険制度が保険料を市町村窓口や金融機関の振り込みなどで納付しているのに対し、新制度は年金からの天引きとなる点を問題視し、年金記録漏れ問題と絡めて新制度を攻撃している。


同党の山岡国会対策委員長は1日の記者会見で「年金が消えて国民を裏切っておきながら、年金から一人残らず天引きする制度は反対だ」として、野党4党が共闘して、年金天引き問題で舛添厚生労働相らを追及する考えを示した。新制度の保険料が4月15日支給の年金から天引きされることを強調し、「4・15ショック」と名付け世論を味方につけようという作戦だ。


一方、政府・与党は新制度導入により、新たに保険料を支払うことになる被用者保険の75歳以上の被扶養者約200万人の保険料支払いを半年間凍結するなど政権批判につながらないように、手を打ってきた。「現行の国民健康保険などと比較して、低所得層や平均的な年金受給者層など、保険料負担が減る人の方が多い」(厚労省幹部)と新制度の利点を強調する。


それでも野党側の攻勢に対し不安は隠せない。


福田首相は1日の閣議で、舛添厚労相に対し「後期高齢者医療制度というネーミングが良くない。通称は『長寿医療制度』ではどうか」と指示。厚労・総務両省は急きょ「『長寿医療制度』実施本部」を設置した。首相が制度開始後に名称に注文をつけるという異例の事態が示すように、政府は新制度が国民から悪いイメージで受け取られないように神経をとがらせている。


読売新聞
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