介護 負担増える老健施設 2007参院選

松本市蟻ヶ崎にある「松本市城山介護老人保健施設」。看護師が、女性入所者の胃に開けられた穴にチューブを差し込み、1日3回以上栄養剤などを注入している。


女性は認知症と高血圧症に老衰が加わり、寝たきりの状態。体力の低下が見られ、要介護度は2番目に重い「4」。チューブによる“食事”(経管栄養)は女性の生命線で、差し込みは施設内では医師と看護師だけしかできない医療行為だ。


同施設は、松本市が土地と建物を所有し、松本市医師会が市の指定管理者となって運営している。


病状がほぼ安定している高齢者が入院する療養病床14床と、一般病床5床を持つ診療所を、老人保健施設(定員100人)に併設していたが、赤字経営から脱却するため、診療所は今年3月末で廃止。国の薦めに乗る形で、県内では初めて、療養病床を老健施設に転換した。女性も“転入組”の1人だ。


国は増大する医療費を抑制するため、2011年度末までに、療養病床のうち介護保険が適用される病床を全廃し、医療保険適用型も4割減らすことを昨年6月に決めた。計画では、廃止されるのは23万床に上る。


しかし診療所と違い、老健は高齢者が再び家庭生活を送れるようリハビリなどで支援することを目的にしているため、同施設では定員119人に対し、常勤の医師は1人、看護師は15人しかいない。夜間は医師不在で、看護師は2人だけとなる。同施設の入所者の平均年齢は85・9歳。女性のように、経管栄養を施している介護度の高い入所者がほかに10人いる。


いくら症状が安定しているとはいえ、介護度の高い人ほど、恒常的な医療行為が欠かせず、抵抗力が落ちているため、感染症にかかって症状が悪化するリスクも高い。


にもかかわらず、老健は介護保険の報酬で運営されており、医療保険の同時併用はできないため、恒常的な医療行為の費用は老健自身の負担となる。


同施設の小林巌施設長(70)は「今後、介護度の高い人が老健に増えることは必至だ。このままの体制で療養病床の患者を受け入れたら、老健はパンクする」と危惧(きぐ)している。


療養病床の制度は介護保険制度の導入を受け、2001年3月からスタートした。慢性疾患などによる長期の入院療養を送る患者を対象とし、一般病床より医師、看護師の数を減らした。しかし、医療費を抑制できなかったため、国は5年後、再び制度を変更した。


松本市医師会理事の松岡健さん(56)は、「(老健への)転換を後押ししようと、国は1人当たりの床面積を減らすなど施設基準をどんどん甘くしており、朝令暮改も甚だしい。もっと現場をよく見て、明確な対策を早く打ち出すべきだ。でないと、各病院は(老健への転換に)二の足を踏むだけ」と話している。(柳沢譲)


■4党の公約■(上から参院の勢力順、長野選挙区に候補擁立している党のみ)


<自民> 高齢者が要介護状態にならないよう、予防を推進。住み慣れた地域で生活できるよう地域密着型サービスを拡充。認知症対策やユニットケア(少人数の家庭的な雰囲気での介護)などを推進していく。


<民主> 介護報酬を見直し、療養病床から退院を迫られることがない措置を講じ、受け皿となる施設の整備を早急に実施。在宅介護推進のため、ヘルパーや介護支援専門員を増員、労働条件を向上させる。


<共産> 短期入所施設の確保、グループホームへの支援など住み慣れた地域で暮らせる基盤整備を進める。介護労働者の労働条件の改善に取り組む。財源確保のため国庫負担割合を当面30%に引き上げる。


<社民> 介護難民を生み出す療養病床の削減に歯止めをかける。低所得者が利用しにくい介護保険制度を立て直し、利用料を所得に応じて軽減。大手民間介護事業所の問題を、制度の欠陥として是正する。


読売新聞
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