舞鶴市のケアマネジャー、松味喜久代さん(39)は高齢者36人のケアプラン(介護計画)を受け持っている。 たった1人でつくった事業所の名前は「小春日和」。手がけるのはケアマネ業務だけだ。
自宅で独立開業
通常、ケアマネ業務は訪問介護や病院、老人ホームなどを運営する「サービス提供事業所」に属するケアマネが行っている。松味さんのようなスタイルは「独立ケアマネ」と呼ばれ、京都はもとより全国でも少ない。
なぜか。「簡単に言えば、ケアマネ業務だけでは生活できないからでしょうね」。松味さんはあっけらからんと答える。1人のケアプラン策定の報酬は、経費込みで原則8500円のみだ。
松味さんももともと、社会福祉士として近隣県の介護施設に勤めていた。介護保険スタートとともに新設のケアマネ資格も取得したが「施設という組織の都合に縛られ、利用者に向き合いきれないことに不満がたまった」。3年前、舞鶴市の自宅で独立開業した。
最初の1年は大変だった。市内のサービス提供事業所を回り、顔を売り込み、どんな特徴があるかを頭にたたきこんだ。「ケアマネだけでやっていけるの?」。周囲はいぶかったが、当初6人だった利用者は口コミや紹介で増えていった。
「1人で目が届くのは30人が限度」と思っていたが「どうしてもあなたに」と頼む利用者を断り切れず、いまに至っている。施設勤務時代に約400万円あった手取り年収はおよそ3分の1に減った。週末でも夜中でも利用者から電話がかかってくる。それでも、後悔はないという。
利用者側に立てない
「夫がいなかったら生活も厳しいくらいなので、他の人には勧めにくいけど」と笑いながら、「でも、サービス提供事業所に属していると、完全に利用者の側に立ち切れない。いまは利用者の代弁者として事業所にも苦情を言いやすいし、公正なケアプランを立てられる。しんどいけど、満足度は高いです」
介護保険でケアマネジャーが十分機能していないといわれて久しい。「ケアマネを営業マンのように使い、無理にサービスを増やさせたり、顧客を開拓させる事業所がある」(京都市のヘルパー)、「他の事業所より、自分の事業所のサービスを優先的に組み込むのはやむえない」(滋賀県のケアマネ)
こうした動きがひどくなると、不正につながる。ケアマネとサービス提供事業所が結託して、実際には提供していないサービスの報酬を請求するのが典型的な手法だ。
公正さと中立性
そこで改正介護保険法は、保険者である市町村の役割を重くして「公正さと中立性」の確保を目指す。多くの市町村がケアマネに全面委託していた要介護認定の訪問調査は、来年4月の新規分から市町村が直接行う。「恣意(しい)的な調査で、要介護度を上げるケアマネがいる」との批判に応えた形だ。
軽度認定者のケアプラン策定も、新たに市町村が創設する「地域包括支援センター」が中心を担う。軽度認定者への「過剰なサービス提供」を避ける狙いがある。
ただ、同センターは既存の在宅介護支援センターに委託することも可能だ。「看板の掛け替えで終わるのでは」との見方も少なくない。
一方、ケアマネの資格を5年ごとの更新制にするなど管理強化も進む。松味さんは「ケアマネが単なる『給付管理屋』にならないよう、専門性と待遇を高め、独立開業できる環境を整えるべきだ」と話す。厚労省もケアマネ報酬の増額などは検討している。地域の福祉資源を組み合わせ、高齢者を主人公に暮らしを支える、ケアマネ本来の役割が問われている。
≪ケアマネジャー≫
介護支援専門員。医療、福祉分野の専門家が試験・研修を経て資格を得る。ケアプラン作りのほか、サービスの手配や自己負担額の計算など介護保険の中枢を担う。国の指針は「ケアマネ1人に50人の利用者」だが、1人で100人前後を受け持つ例も少なくない。看護師など、資格を持ちながら実働していないケアマネも多く、人材確保が課題。
≪地域包括支援センター≫
高齢者3-6千人に1カ所の割合で設置し、主任ケアマネ、保健師、社会福祉士の各資格者を置くことになる。軽度利用者(従来の要支援と要介護1の7-8割が対象)に介護予防を重視したケアプランを策定するのをはじめ、高齢者の権利擁護も担う。市町村直営か委託かは自治体の判断に委ねられる。京滋では京都市などが委託、近江八幡市などは直営の方針。
京都新聞

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