変わる制度(3)居住費・食費が自己負担に

「施設利用者の方には負担が厳しくなります」。そう説明する京都市の担当職員の声に、参加していた特別養護老人ホーム(特養)の女性職員は深いため息をついた。


改正介護保険法では、今年10月から特養など介護保険施設の居住費(光熱費など)と食費がすべて自己負担になることが決まった。施設の形態や入所者の所得などで異なるが、標準で月2-3万円前後も上がる。そこで京都市は7月下旬、施設関係者を対象に説明会を開いたのだ。


負担増月2万円余


この女性職員が勤める特養ホームでも、負担が増える入所者が少くないという。その1人、トモコさん(72)=仮名=は、腰の神経の悪化で両足が不自由になり、約1年半の順番待ちのうえ、昨夏ようやく入所した。


現在、トモコさんがホームに払っている自己負担額は、介護保険の利用料(給付の1割分)と食費の一部で、合わせて月5万円余り。しかし、ホーム側の試算では、10月から一気に月2万円余り負担が増える見通しだ。


低所得者には軽減措置が設けられるが、トモコさんは家族(長男のみ)が「課税世帯」とみられるため、適用されそうにないという。


「今は年金で何とか払える額だが、月2万円以上も上がると無理」と女性職員。「不確定要素もあるし、不安にさせてもいけないので、まだ本人には伝えていない。6月に法改正して、10月に徴収開始というのはあまりに急すぎる」と憤る。


介護保険料も値上げ


介護保険施設の食費や居住費については「在宅介護では本人や家族が負担しているのに、施設は保険負担というのは不公平。介護者の側に施設に入れた方が『安くて楽』という意識が働きやすい」(厚生労働省)として見直された。


だが、「本来は在宅介護の負担軽減こそ目指すべきだ」と、京都市内で特養やグループホームなどを運営する社会福祉法人理事長の廣末利弥さんは言う。「今でもグループホームは自己負担が高い(全国平均で月13万円)ため、断念する人が多い。特養ホームもそうなるのではないか」


増えるのは利用料負担だけではない。年3-4万円(月3-4千円)の介護保険料も、来春から値上げする市町村が増えそうだ。


大都市でも高齢化率がトップクラスの京都市では、介護保険のスタート2年目で給付額が当初計画(予算)を上回り、赤字に転落した。そこで4年目に保険料を月額900円値上げしたが、翌年には再び予算オーバーに陥った。すでに返済すべき累積赤字は全国ワーストクラスの約30億円(2005年度予算)にのぼっている。


制度に沿って、この赤字分を保険料に上乗せすると、単純計算で来年4月から月300円程度の保険料値上げが必要だ。高齢化の進行による給付の自然増を見込めば、それだけではすまない。


揺らぐ社会保障制度


赤字の主因は要介護者の増加。京都市保健福祉局は「増加のペースは落ち着いてきているし、今回の法改正に伴う介護予防や施設負担の見直しなどで、全国的に保険給付額は減る」とみるが、値上げ自体は避けられそうにない。京滋では亀岡や栗東など28市町村も赤字。各市町村とも秋には、来年4月からの新たな保険料を公表する見通しだ。


介護の負担増に続き、政府は、高齢者の医療費負担も増やす方針で検討している。一方で年金は減り続け、課税も強化されている。暮らしの「安心」を支えるはずの社会保障制度は今、大きく揺らいでいる。


≪介護保険の財源≫

40歳以上の全国民から徴収する保険料と、国や自治体の税金の折半。このうち、65歳以上の高齢者の保険料で「市町村のサービス給付総額の18%」を賄う。そのため、要介護高齢者の人口比率が高い市町村ほど、保険料も連動して高くなる。


京滋では基準月額3800円台-2500円台と市町村で開きがある。全国平均は3300円。保険料は、市町村がサービス給付状況に応じて3年ごとに見直す決まりで、来年4月が改定期にあたる。改正介護保険法では、高齢者の所得に応じ、市町村が独自に保険料の増減段階を細かく設定できるようになる。


京都新聞
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