「あと10回、できそうですか。少し重りを減らしてみましょうか」。スタッフの声に、右半身にまひがある女性(71)は「このままでやれそうや」と、太ももの力を鍛えるマシン運動に懸命に挑む。「運動のおかげで、足の調子がいいわ」。女性の笑顔が弾けた。
自立目指して筋トレ
亀岡市が昨年度から始めた筋力トレーニング教室だ。6種類の筋トレマシンに、1班6-8人が参加している。週2回、3カ月(24回)で修了する。
対象は60歳以上の「虚弱高齢者」。介護を必要とせず、自立した生活が送れるように筋力をつけるのが狙いだ。昨年度の教室修了者14人に実施した体力測定やアンケートの結果、「体が動きやすくなった」「腰痛がよくなった」など、全員に何らかの効果がみられた。握力や最大歩行時間も向上した。
中心スタッフの理学療法士、安田聖志さんは「専門家による十分な態勢、本人の意欲、筋トレがふさわしい高齢者を選ぶこと-の3点が成功のカギ」と話す。
教室では、安田さんのほか、血圧や脈拍など健康管理にあたる看護師が3人、筋トレの前後にストレッチ体操を教える運動指導士の計5人が付き添う。「筋肉を痛めたり、体を悪くしたら元も子もない。これくらいの態勢は必要です」。
モデル事業で悪化も
改正介護保険法の柱として「新予防給付」が創設される。現行の「要支援」全員と「要介護1」の7-8割が対象となる。新たに予防デイサービス(通所介護)などが設けられ、そこで筋トレや栄養改善指導、歯磨きなどの口腔ケアが用意される。
介護保険の認定を受けていないが「将来、要介護状態になる恐れがある高齢者」にも、地域支援事業(財源は介護保険)として予防サービスが行われる。
厚生労働省は▽認知症や病状が不安定な人は対象としない▽筋トレを強制しない▽実施3年で事業を評価して見直す-などの方針を示しているが、詳細は検討中。筋トレの現場に、どんな専門家を置くのかなども明らかではない。
「いまのデイサービスセンターの片隅に筋トレマシンを置いて、やりたい人がやるというような中途半端な形なら、下手に筋トレはやるべきでない」(京都市内の整形外科医)との批判も強い。
実際、厚労省のモデル事業(全国48市町村)では、筋トレをした高齢者の16%に介護度の悪化がみられた。
安田さんは「手足のまひや関節炎など筋トレで生活改善効果が出る人は確かにいる。だが、それを見極め、やる気を引き出すには高い専門性が求められる」と実感を語る。教室の修了者に対し、3カ月後に体力測定をしたところ、能力が落ちている人も多かった。いかに継続するかも大きな課題という。
給付抑制の思惑
また、新予防給付では従来の全面的な家事代行は一定制限される。「予防訪問介護」として、ヘルパーと一緒に利用者も調理や洗濯に極力かかわり、自立を促すという。「過度な介護が利用者の生活機能を低下させている」(厚労省)というのが理由だ。
介護現場からは「過剰サービスは一部の業者」との反発が強く、元厚労省老健局長の堤修三大阪大教授も「給付を抑えて国庫負担を減らすために、介護予防をキャッチフレーズに国主導でつくった改正。要介護者(利用者)の顔が見えない」と指摘する。
「介護予防」は重要だが、それを理由に軽度利用者の保険給付額や必要なサービスを削ったり、「元気」を押しつけることがあってはならない。実施主体となる市町村の柔軟な対応と、きめ細かな配慮が望まれる。
京都新聞

Comments
コメントはまだありません。
コメントをどうぞ