生きることの基本は食べて、出すこと-。それだけに身体介護の現場で「排泄(せつ)ケア」は極めて重要だが、知識やノウハウの普及は遅れている。そんな中、京都発の「オムツフィッター」という資格が注目されている。排泄ケアの相談に乗る専門家だ。全国から受講者が集まっており、先ごろ初の2級講習会も行われた。
事例設定して実演
京都市内で開かれたオムツフィッター2級の講習会をのぞいてみた。夜間に尿漏れがある▽排便もれがある▽認知症のため、便いじりやオムツはずしなどがある-といった事例を設定し、受講者が介護家族と相談員に分かれて実演する。
「オムツから便がもれて困っています」という家族に、相談員が要介護者の状態や食事、使っているオムツの種類などを聞いていく。
「オムツを何枚も重ねると余計にもれることもあります。パットを使ってはどうでしょう」などとアドバイスしながら、オムツのあて方やテープ止めの工夫、防水シーツの使い方を伝える。
やりとりを聞いていた受講生からは「たくさんの情報を伝えすぎてまとまりがない」「相談員がしゃべりすぎ」など厳しい批評も出る。
総評した講師の浜田きよ子さんは「対等な立場で、相手に共感しながら一緒に考える姿勢と、介護者・利用者双方の視点を持つことが大事」と強調した。
その上で「短期目標として、便が漏れない方法を伝えると同時に、オムツを使わず、ポータブルトイレなどで座って排便をする長期目標も提示するべき。オムツフィッターはオムツ選びが重要なのでなく、介護者や本人の生活をよくするために、適切な排泄用具や方法を伝えるのが役割。ずっと天井をながめて、オムツの中に便をする暮らしを変えるのを手助けするのです」と結んだ。
泊まり込みで講習
認定資格を創設したのは、浜田さんが代表をつとめる京都市上京区の排泄用具情報館「むつき庵」。ここでの相談経験や福祉施設との共同勉強会を通して培った知識やノウハウを伝える。
3級は2泊3日、2級はさらに1泊2日の講習を3回受ける。排泄用具、医療、福祉制度などの基礎知識から、実際に自分でオムツを着けての排泄し、不快さや不便さも体験する。 昨秋からスタート。北海道から沖縄まで全国各地から京都を訪れ、すでに90人が3級を取得した。職種は施設職員や看護師、ケアマネジャー、ヘルパー、福祉機器メーカーなど多岐の医療福祉関係に及んでいる。
専門性高い知識
福井県から受講した建築士の稲村吉則さん(55)は「住宅改修を手がけているが、トイレをなおすにも排泄ケアの知識が必要と思い、学びに来た。在宅介護を支えるために役立てたい」。
京都市伏見区の特別養護老人ホームで介護にあたる伊藤澄子さん(52)は「これだけ専門性の高い排泄ケアの知識は、ここ以外に学ぶ機会はない。施設ではできるだけ入所者のオムツを外し、パンツを使う取り組みを進めており、そこに生かしたい」
浜田さんは、講師となる人材を育てる1級講座も検討中。「食べて出す-というのは人間の尊厳にかかわること。食事の情報は多いが、排泄は触れられることが少なく、ともすればなおざりにされてきた。多くの排泄ケア専門家を育て『むつき庵』のような場が全国にできればいい」と話している。
≪むつき庵≫
オムツやパット、トイレなど排泄用具を展示し、情報提供や無料相談にあたっている。各種メーカーなどの協賛金で運営。全国でも珍しい施設で、2003年にオープンした。京都市上京区。電話075(803)1122。
京都新聞

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