特別養護老人ホーム(特養)などで、入居者を小グループに分けて世話をする「ユニットケア」。従来の集団介護を変える試みとして広がる一方、取り組み方は千差万別で施設間の格差も指摘されている。京都府北部では、ユニットケアを実践している4施設が互いに介護内容を評価し合い、レベルアップを目指す全国的にもユニークな試みを始めた。
30項目の評価表
昼下り、紺碧に輝く宮津湾にほど近い京都府野田川町。町内唯一の特養「虹ヶ丘」に、10キロ余り南に離れた大江町の特養「五十鈴荘」から、職員の香山真美子さん(44)と林本里美さん(25)がやってきた。
2人の目的は、虹ヶ丘が取り組むユニットケアの評価だ。香山さんも林本さんも、五十鈴荘ではユニットケアを実践する立場。「どこに評価基準を置くか難しいですが、私たちが日ごろ感じているユニットケアの課題を、虹ヶ丘ではどんなふうに対応しているのかを中心に見てみたい」と香山さん。30項目に及ぶ評価表を手に施設内をくまなく歩く。
午後2時にスタートして午後9時まで。さらに翌日の午前7時から午後2時まで。施設の1日の流れに沿い、食事や排泄など介護の仕方から、設備、入居者や職員間のコミュニケーションの取り方、介護計画(ケアプラン)の状況、勤務体制などをチェックし、10点満点で採点する。
ありのままを見る
どの職員や入所者に話を聞いてもいい。書類やパソコンをみるのも自由だ。食事なども入居者と一緒に摂る。
廊下に出したベットで眠る入居者を見つけた香山さん。「いつもここで寝ているんですか」。「この方、昼寝はここが落ち着くって言われるんですよ」と虹ヶ丘のユニット主任、小薮利恵さん(26)が説明する。
小薮さんは前月、五十鈴荘に評価員として訪問した。「今度はこちらが評価される番だけど、特に意識はしません。ありのままを見てもらい、日ごろ気づかないことをどんどん指摘してほしい。私もそうしましたから。逆にいいところは学び合う。私の場合、五十鈴荘でみた排泄介助の際の声のかけ方などは、すぐに取り入れました」
虹ヶ丘と五十鈴荘は2002年10月から、いちがお園(京丹後市丹後町)と丹後園(京丹後市網野町)を合わせた4つの特養で「ユニットイン北京都」を結成している。それぞれが取り組むユニットケアについて、現場の職員同士が定期的に意見や情報を交換する地域ネットワークだ。
なれ合いを排して
相互評価は今年3月から始めたばかり。月ごとに評価対象施設を決め、その間に残り3施設の評価員が日を変えて順番に訪問する。全施設の評価が一巡するのは6月になる。
全国にも例のない試みだけに、手探りの状態。「今回をたたき台にして評価項目などを見直し、毎年続けることでノウハウをつくっていきたい」(五十鈴荘の佐藤裕之施設長)という。
虹ヶ丘の土居正志施設長は「ユニットケアで大事なのは、設備以上に職員一人ひとりの意識や能力。同業者同士で点数をつけ合うことで切磋啄磨し、なれ合いを排して利用者本位のサービスが追及できれば」と話す。今後、評価結果や手法は公開していく方針だ。
個性重視した個別ケア ユニットケア
日本の高齢者介護施設では、数人が同じ部屋で暮らし、食事やオムツ交換、入浴などを一斉に行う集団介護が主流。これを見直し「その人らしい個性や生活を重視した個別ケア」を目指して先駆的な施設が始めたのがユニットケアだ。
施設を個室化した上で10人前後を1単位(ユニット)とし、それぞれに台所や居間など設けて、生活に近い介護をすすめるのが一般的。グループホームにヒントを得ている。厚生労働省も2003年度から制度化し、全室個室でユニットケアを行う「新型特養」(京都府15カ所、滋賀県12カ所)の建設を進めている。
従来型の特養でも、相部屋に仕切りを置くなどしてプライバシーを尊重した上で小集団に分けるなど、独自の工夫でユニットケア手法を導入する施設が増えている。ただ、形式がまちまちで、京都府、滋賀県とも「正確な実施数は分からない」という。施設が狭い、職員数が多く必要となる-などの理由で実施していない施設も多い。
京都府が2003年にまとめたユニットケアの報告書によると、実践施設では「利用者の生活リズムに合わせたきめ細かな介護ができ、明るく落ち着いた雰囲気がつくれる」などの大きな効果が上がっている。一方で、個室の場合は入居者が閉じこもりがちになったり、少人数のために人間関係が煮詰まると入居者、職員ともにストレスが強まるなど課題もある。人件費や職員労働力の負担の大きさも問題だ。
京都新聞

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