小規模多機能施設(4) 地域密着、課題と利点に
「地域あっての小規模多機能施設。先に施設ありきでつくっていくと、グループホームのようになりかねない」
2月下旬、全国の小規模多機能施設関係者が集まって名古屋市で開かれたセミナー。早くからグループホームや宅老所を運営してきたNPO法人のメンバーから、こんな言葉が飛び出した。
グループホームは認知(痴呆)症の高齢者とスタッフが少人数で暮らすことで、家庭的な雰囲気をつくり、症状を抑える効果を狙った施設だ。介護保険のスタートとともに制度化され、この5年間で23倍(6300カ所)に増えた。
評価する声の一方で、「粗製乱造で、介護技術のレベル差が広がっている」との指摘も強く、問題が噴出している。
今年2月、石川県のグループホームで職員が入居者の行動などにいら立ち虐待死に至らしめた事件は、その典型例といわれる。「決して他人事ではない」。多くのグループホーム関係者は言う。
目的と理念の共有
名古屋の全国セミナーでも、小規模介護施設の問題点として▽入居者同士やスタッフとの人間関係が悪くなると修復しにくい▽閉鎖的、密室的になりがち▽介護スタッフが少ないため、技術が未熟だとカバーできないことが多い-などが挙がった。サービスを多機能化することで、利用者を同一施設に「囲い込む」問題も懸念されている。
熊本県で先駆的に「小規模多機能ホーム」を運営する川原秀夫さん(54)は「これまでの小規模多機能施設は地域ニーズに沿って(自発的に)生まれてきた。それを制度化に合わせて新設する場合は、いかに地域に開き、根を張るかが最大の課題になる」と強調する。同ホームでは、地域住民が参加する運営委員会がホームと地域のパイプ役を担っている。
京都市伏見区で近く小規模多機能施設「丹波橋の家」を開設する山田尋志さん(58)も「地域住民とスタッフが、この地域に小規模多機能施設をつくる目的と理念を共有できるかどうかが成否のカギ」とみる。
自治体間で格差も
小規模多機能施設の制度化に伴い、自治体間の格差も広がりそうだ。介護保険改正法案(審議中)では、小規模多機能施設の指定権限が、従来の都道府県知事から市町村長に委譲される見通しだからだ。
「宅老所(小規模多機能施設)は地域に『点』を打ち、再生させる取り組み」として全国に先駆けて実践してきた愛知県高浜市の森貞述市長は「市町村長の考え方次第で、かなり弾力的に施設を運用できるようになるので、自治体によって取り組みに差が付くだろう」という。
湖南市石部で宅老所を運営する溝口弘さん(57)はそうした多くの課題を認識しつつも、制度化を前向きにとらえる。
「大きな施設中心から、地域密着の小さな施設に制度の目が向き、利用者の選択肢が広がるのは大きな一歩。小規模多機能施設も標準化(制度化)すれば、必ずそこからこぼれる人が出てくる。それをすくい、また制度が追いつく。その繰り返しでしょう。まずは動かないと始まらない」
下京区の宅老所「せりの里」(高齢者の通所介護)を運営するNPO法人の小野克己さん(54)も「地域の結びつきが薄くなる中、安心して住み続けられるまちづくりに貢献したい」と力を込めた。
京都新聞タグ: 小規模多機能型居宅介護施設
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