「赤いりんごに口びる寄せてー」。お年寄りと障害者の歌声が響く中、ランドセル姿の子供らが「ただいま」とあいさつしながら入ってくる。


湖南市石部の宅老所「共生舎なんてん」。高齢者のデイサービス(通所介護)施設として5年前に開設した。「家にも来て」という高齢者の声を受け、ホームヘルプ(訪問介護)を始め、介護家族から「少し泊まらせて」との要望で、一時宿泊事業も行うようになった。


互いに合うペース


まさに典型的な小規模多機能施設だが、それだけではない。放課後の障害児も預かり始めた。さらに知的障害者も集い、認知(痴呆)症高齢者の世話をしたり、話し相手になっている。いずれも、宅老所代表の溝口弘さん(57)が、23年前から知的障害者の共同事業所(雇用の場)を運営しているのが縁だ。


溝口さんは「高齢者も障害者も、互いにペースが合うのか、落ち着いた雰囲気ができている。障害や年齢に関係なく、地域で暮らし続けようとする人たちを支援していったら、自然と小規模多機能施設になりました」と振り返る。宅老所とは別に、溝口さんは知的障害者と認知症高齢者の各グループホーム(少人数の住まいの場)も近くで運営するようになった。


高齢者介護と障害者福祉を合致させたのが「共生舎なんてん」なら、高齢者介護と育児支援を手がける小規模多機能施設が、東近江市八日市の「しみんふくしの家」だ。


10年前、市民グループで「ファミリーサポートセンター」を設立したのがきっかけ。当初は子どもの一時預かりや高齢者への訪問介護を行っていた。


介護保険のスタートに合わせ、平屋のアパートを借りて認知症高齢者のグループホームを開いた。アパートが全室空いたのを契機に保育所(乳幼児)と学童クラブ(小学生)も併設し、高齢者と親子の交流スペースも設けた。


「おはようございます」。保育所の子どもたちは毎朝、元気にグループホームのお年寄りにあいさつする。一枚の障子を隔てて行き来できる。


生き生きした場に


運営するNPO法人理事長の小梶猛さん(58)は「どこのグループホームも『地域に開かれた施設』を掲げているが、実際は家族しか出入りしていない」。その結果、少数の高齢者とスタッフだけが終日顔を合わせることになり、人間関係が煮詰まりやすい。「保育所や学童クラブの併設で、自然と地域の親子が訪れる。高齢者と声を掛け合うようになり、家に近い生き生きした場ができつつある」。


小梶さんの本職は一級建築士。他のメンバーも専門職のほかは、地域の主婦や僧侶などさまざまだ。「ファミリーサポートセンターのころから一貫しているのは、暮らしやすい地域をつくるために、どんな課題があるかを考え、その解決に向けて役所任せにせず、自分たちにできることをやってきた」と小梶さん。そうするうち「結果的に小規模多機能になった」。小梶さんからも、溝口さんと同じ言葉が出た。


高齢者介護の多機能サービスから、縦割り制度を超えた地域の多機能拠点へ。先駆者たちの取り組みに、小規模多機能施設の大きな可能性が見えてくる。


京都新聞
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