10人前後の高齢者を対象に、通い、訪問、泊まりなどのサービスを柔軟に提供して在宅生活を支える「小規模多機能施設」(宅老所など)が注目されている。介護保険法の改正で制度化される見通しになったからだ。先進的に取り組んできた滋賀県ではさらに活発化しそうで、大規模施設が中心の京都でも動きが表れている。地域に根ざした小規模多機能施設はどんな可能性を秘めているのか。現状と課題をシリーズで紹介したい。


家庭的な雰囲気


大津市西部の住宅街。蔵のような一軒家が立つ。「まごころの家」。3年前に開設した典型的な小規模多機能施設だ。


定員10人で、スタッフはボランティアも含めて5人。家庭に近い雰囲気で、きめ細かな目が行き届く。自宅で暮らす高齢者が「通う」デイサービスが基本。地域の25人が登録しており、週1-5回送迎バスに乗ってやってくる。登録者全員が認知(痴呆)症だ。


吹き抜けの居間には、暖炉が燃えている。おしゃべりを楽しむ人、3つある和室で囲碁を打ち合う人、お菓子づくりを楽しむ人…。介護福祉士の松田郁子さんは「大きな施設だと、プログラムにお年寄りを合わせてしまいがち。それは避けている」と話す。


夜間、休日も世話


まごころの家では昨年からホームヘルプも始めた。他の施設が避ける夜間や休日も行う。介護家族が急病や急用の際には、お年寄りにそのまま泊まってもらうサービスも始めた。「25人の登録者の在宅生活を支えるために後付けしたサービス」という。


デイサービス(通い)とホームヘルプ(訪問)は、介護保険の適用を受けているが、泊まりは制度にないため、自主事業だ。1泊8500円を家族が負担する。それでもニーズは高い。 代表の八田憲児さん(46)は「短期入所(ショートステイ)施設はどこも予約でいっぱい。緊急時には対応できない。お年寄りも慣れない人や場所では、認知症が悪化することがある。ここなら、なじみの職員と一緒。喜んで泊まってくれる」と利点を強調する。


地域で暮らす


こうした施設は一般に「宅老所」などと呼ばれてきた。なじみの職員による「通い」「訪問」「泊まり」の三位一体サービスに加え、それでも自宅で暮らせなくなった高齢者には「住む場」を提供している例も多い。小回りの効かない大規模施設に対し「制度のすき間を埋め、地域で暮らし続けたい高齢者のニーズに合わせて成長する施設」「在宅介護支援の切り札」と高い評判を得てきた。


福岡や長野などで先進的に実践され、滋賀県も宅老所開設に補助金を出すなど後押ししている。


こうした経緯を踏まえ、いま国会で審議中の介護保険改正法案には、小規模多機能施設を制度化する内容が盛り込まれた。ようやく「日の目」を見ることになる。


まごころの家の八田さんは総合病院の事務次長などを経て、看護師の母親が長年希望していたこの施設を開設した。「先祖から引き継いだ土地と家があったのでできたが、介護事業だけでは人件費も厳しい」と現状を打ち明ける。医療事務の請負などで収支を合わせているという。「制度化には期待しています。ただ、不安もあります」。


京都新聞
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