(102)ケアの「中身」が大事

介護保険という制度はできた。介護福祉士という専門家も養成されている。でも肝心なことが抜けている。その制度と、介護の力で何をすればいいのかというケアの中身が理解されていないのだ。


オムツ交換をうまくするのが介護ではない。まず、オムツにしなくてすむ工夫をすることが介護だ。機械で風呂に入れるのが介護ではない。ふつうの浴槽に入れる条件を作り、技を身につけるのが介護なのだ。


私は何とか“介護の世界標準”を作りたいと思ってきた。『関係障害論』『痴呆論』(雲母書房)など多くの本を書いてきたのもそのためだ。題名でもわかるように、いずれも医療や介護の専門家向けの本である。


でも、今や介護は専門家だけのものではない。「介護している家族向けの本を」と依頼されて作ったのが『完全図解新しい介護』(講談社)だ。この本は、介護の本は売れないという出版界の常識を覆し、ベストセラーを続けている。韓国、台湾に続いて昨年は中国でも翻訳出版された。世界標準とまでいかなくても東アジア標準にはなりつつある。


しかし、家族向けの本を書くのは難しい。専門用語が使えないからだ。そこでイラストや図表を中心にした。それが好評らしい。一般の人向けの新聞連載となるともっと難しい。毎週締め切りもある。お陰で、私の頭髪はこの2年ですっかり薄くなった。そろそろ自分の老いという初めての体験を迎えねばならない。他人の老いにかかわってきたことが少しは役立つと思いたい。(三好春樹=「生活とリハビリ研究所」代表)



三好さんのコラムは今回で終わります。


読売新聞
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