(65)世話好き「姉さん」と散歩

認知症の老人が落ち着いて生活するには「仲間」が必要だと述べてきた。だからといって私は、認知症の老人ばかりを集めるべきだと主張しているのではない。たしかに認知症の老人同士は共感できる仲間になれる。でも、認知症のない老人もまた仲間になれるのだ。しかも、大切な仲間に。


特別養護老人ホームに入所して5年目になる山内さん(仮名、81歳)は、6人の子供を育てあげた世話好きの女性である。その彼女がいま世話を焼いているのが、同じ部屋のSさん(80歳)だ。入所して間もないせいもあるのだが、自分の部屋もわからないくらいの認知症である。


多少、お節介気味のところに嫌な顔をすることもあるものの、Sさんは山内さんをすっかり頼りにして、食堂や談話室に案内してもらっている。Sさんにとって山内さんは、怒ったりバカにしたりしないで規範を教えてくれる仲間なのだ。


惚(ぼ)けた人と一緒にすると、惚けていない人に迷惑をかけるんじゃないか、と心配する人もいる。しかし、惚けのない人同士でも、人間関係でもめることはよくある。うまくいくかいかないかは、惚けの有無より相性が合うかどうかである。


惚けた人とそうでない人を、相性によって組み合わせてみるといい。世話好きと依存したがっている人のペアを作るのだ。山内さんとSさんのように。


気が付くと2人は手を引き合って施設の周りを散歩するようになった。Sさんは山内さんを「姉さん」だと言い出した。過去の人間関係になぞらえて新しい人間関係を作り始めたのだ。(三好春樹=「生活とリハビリ研究所」代表)


読売新聞
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