寿地区の高齢化

「福祉の街」に施策を示せ


横浜市中区の寿地区は少子高齢化が加速し、県内屈指の「高齢者の街」に変ぼうしている。簡易宿泊所(簡宿所)が立ち並ぶ、かつての日雇い労働者の街を「今は大きな福祉施設」と形容する関係者らもいるが、街の実態からすると大げさな表現ではない。


加速化の現象は、市が生活基盤の弱い単身の高齢者を同地区に誘導したことによって引き起こされた側面もある。高齢者の福祉施策を広く充実すべきだろう。


市健康福祉局の統計では、昨年十一月現在の寿地区の六十歳以上の人口は三千五百人余で、全人口の55%。六十五歳以上の割合(高齢化率)は37%で市全体の17%に比べて突出する。一九九〇年代から高齢化が顕著になっており、このペースで進めば十年後には地区人口の八割が六十歳以上になる。


一方、中学生以下は七〇年ごろの約五百人をピークに、二〇〇〇年には七十二人、昨年はわずか六人になった。少子高齢化が他地域に比べ異常ともいうべきスピードで進行しているのである。


同地区は、港湾整備などで大量の港湾労働者を必要とした五〇年代から、日雇い層がまとまって住むようになった。市によると、時代とともに雇用形態が日雇いから派遣やパート労働に移り、働き盛りの若者が流出し、定住したかつての日雇い層の中高年者が全体に高齢化してきたという。この説明だけなら、寿地区の人口は山村の過疎地のように減少してもよさそうだが、そうはならない。


少子高齢化が顕著になった十数年来、寿地区の人口は六千五百人前後で変動がない。高齢者を中心にした新たな流入層が人口を維持しているからだ。市はホームレスになったり、なりかけた高齢者の生活保護受給手続きの過程で入居が容易な簡宿所に誘導、囲い込む対策を進めた結果、超高齢社会を出現させたのではないか。


寿地区の高齢者福祉の現状はどうか。ここに住む単身の高齢者は高血圧、糖尿病、肝臓病などの慢性疾患にかかっている人たちが多いが、病状に応じての食事や服薬ができずにいる。要介護認定を受けても、ヘルパー不足がネックで訪問介護を受けられない人たちがいる。給排水設備のない簡宿所では訪問入浴も受けられない。


生保受給者は担当のケースワーカーが一定の見守りをするが、年金生活者はそうもいかない。ある七十代の男性は部屋で寝たきりになった。福祉関係者が数カ月後に発見、緊急入院させたが、末期がんの状態だった。人知れずに部屋で死ぬ人たちも、この街では珍しいことではないのである。


囲い込みの是非もあろうが、市は高齢化の街に誘導した経緯と向き合って、対策を講じるべきではないか。このままでは、地域の支援活動によっても、ここに住む高齢者は一部しか救えない。


神奈川新聞

If you enjoyed this post, please consider to leave a comment or subscribe to the feed and get future articles delivered to your feed reader.

Comments

コメントはまだありません。

コメントをどうぞ

(必須)

(必須)