介護の密室でヘルパーのセクハラ被害(5)

(5)人権守る体制確立を


ホームヘルパー歴十五年の田中佳子さん(62)=仮名=は、セクハラで他のヘルパーを悩ませた男性宅に派遣されたことがある。五十代後半で独身、独り言のようにわいせつなことを話す男性だった。「嫌で嫌で、聞こえないふりをした。密室は怖かった」


寒い日でもすべての窓とドアを開け、「仕事」という立場を鮮明に相手に伝えた。緊張を強いられ消耗もした。が、チーフヘルパーは「守るから何でも言って」と事有るごとに声を掛けてくれた。安心感があった。


だが、途中でチーフが交代すると状況は一変した。報告しても「あの人ってそうなのよね」と言うだけ。深刻に受け止めていないと思い、気が重くなった。相手の都合で派遣先から外れたが「チーフによって対応も違う」とつくづく感じた。


セクハラは報告しづらいと田中さんは言う。「現場でこれはセクハラだ、と思うこともある。でも性的なことは話しにくく、話しても分かってくれないのではと思ってしまう」


うまくあしらうのも技量のうち、との風潮も一人で抱え込む原因となる。「被害を訴えると、能力がないと思われそう」「担当替えで収入が減ると困る」―。そんな心配を多くのヘルパーが抱えている。


派遣事業を行う横浜市の外郭団体・横浜市福祉サービス協会は昨年八月、被害防止のガイドラインを作った。セクハラの定義と対応の仕方、協会の相談窓口を明示した。派遣先でのセクハラへの対応を明文化するケースは、まだ珍しい。


協会の担当者は「これまでは問題を顕在化させないのが技量と思われがちだった。人権侵害なのだから一緒に考えよう、と示したかった」と話す。ガイドラインは、被害を受けたら「ノーと意思表示」し「いつ、どこで、何があったのか記録」することを呼び掛ける。


あるヘルパーが受けた度重なるセクハラ被害がガイドライン作りのきっかけだった。ヘルパーが所属する事務所は、派遣先から事情を聞き担当替えを提案した。が、派遣先の男性は「担当を代えるな」と納得せず、「契約を打ち切る」と言い出すなど、もつれた末に同協会本部に連絡が入った。事業主の対応の仕方が重要だと痛感した。


被害相談を受ける側のケアマネジャー、杉山道子さん(48)=仮名=は、「話したがらない場合に事実関係を聞き取るのは難しい」と漏らす。それでも、被害の実情を把握し解決への道筋をつけることは欠かせない。「高齢者の性」をタブー視せず、セクハラ被害への対応を正面から語ることができる体制づくりを、介護の第一線のヘルパーたちはいま、切実に求めている。


神奈川新聞
タグ:

If you enjoyed this post, please consider to leave a comment or subscribe to the feed and get future articles delivered to your feed reader.

Comments

コメントはまだありません。

コメントをどうぞ

(必須)

(必須)