(3) 第三者の介在を求め
「介護に行く私に対して、奥さんや恋人に対するような気持ちになるんだろうか」。ホームヘルパー歴十年の大森美枝子さん(58)=仮名=は、セクハラの動機が釈然としない。
派遣先の男性に胸を触られたり、「用がなくても遊びに来て」と誘われたりしたことがある。嫌な気分になりながらも相手の”生きがい”と思い、かわした。「こちらは仕事。一人暮らしの男性の家など、仕事でなければ行かない」。そんな言葉が口をついて出そうになる。
ホームヘルパーは介護保険制度の一環で、在宅介護を支えるため家事や外出を支援する。資格が必要な専門職で、女性が圧倒的多数を占める。その専門性にもかかわらず、「ハウスキーパーと勘違いされる」と感じるヘルパーは少なくない。
「お手伝いさん」と呼ばれる、家族全員分の家事をやらせようとする―。派遣先の家族からこんな扱いを受ける。セクハラの背景には、こうした意識も横たわる。身内に相談しにくい性欲のはけ口を、「外から世話をしに来てくれた優しい女性」に求める構図が浮かび上がる。
派遣先は収入をもたらす”お客さん”でもある。大森さんは「騒いで相手に派遣を断られ、自分の値打ちが下がるのは恐い。収入も減る。結局は上手にあしらうしかない」と打ち明ける。
「高齢者福祉が直面した問題としてセクハラを認識し、派遣先と事業者の間に立つ第三者的機能がぜひ、ほしい」。関東地方に本社があり、全国規模で展開する大手介護業者の担当者は、力を込める。同社には日々、ヘルパーからセクハラの報告が上がる。
被害があれば派遣先にヘルパーの仕事の意義を説明し、続くようなら最終的に担当を代える。それでも実際の対応は難しい。「相手の自尊心を傷つけないように気を使う。それに、売り上げを考えると対等な立場になれない」と漏らす。
誰にも性欲がある以上、セクハラはなくならないのか。「発生をゼロにできないからこそ、手を打つべきだ。ヘルパーにも尊厳があり、その人の譲れない部分は尊重しなければ」(同担当者)。今後、在宅介護の需要は増える。セクハラ被害にストップをかける「第三者」の必要性を切実に感じる。
同社がホームヘルパーと、施設でのデイサービスのヘルパーを募集すると、明らかにホームヘルパーの人気がないのが現実だ。「セクハラを我慢しなければならない」。そんな評判が広がれば、なり手はさらに減る。同社の切実な懸念だ。
神奈川新聞

Comments
コメントはまだありません。
コメントをどうぞ