介護タクシーを開業 地域に恩返し 朝来市の男性

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。


2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。


わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。


人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。


そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。


介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。


今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。


山東町滝田の三宅裕幸さん(44)が、車いすや車輪付きのベッド「ストレッチャー」に乗ったまま移動できる介護タクシー事業を始めた。これまで営んでいた事業がピンチとなったときに助けてくれた人たちへ、恩返しの意味も込め、高齢化が進む地元で業種転換した。


三宅さんはOA機器を扱っていたが事業が苦しくなり、六年ほど前に自動車運転代行業を並行して始めた。そんなとき、事業を軌道に乗せようと地域の人たちが進んで利用してくれ、励ましてくれた。


ともに看護師の妻と長女の影響もあり、代行業のために取得した免許を生かした業種を模索。外出したくても交通手段がない高齢者らの声もあり、ホームヘルパー二級の資格を取った後、二〇〇八年十二月に「介護タクシーひろちゃん」として開業した。


料金は一般のタクシーと同じで、高齢者や身体障害者は一割引き。ストレッチャーや長距離移動でも負担が少ないリクライニング式車いすを有料で貸し出している。通院など外出支援サービスも請け負う。


三宅さんは将来的に、旅客輸送だけでなく掃除やごみ出しなど家事の手伝いなどにも幅を広げたい考えで、「家族で一緒に介護事業所を開くのが夢」と意気込んでいた。同社TEL079・676・5800(藤井伸哉)


神戸新聞
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