地域で支える慢性期医療 神戸で全国研究会

療養病床削減に危機感 「在宅」との連携充実を


「良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」をテーマにした日本療養病床協会の全国研究会がこのほど、神戸市内で開かれた。メーンシンポジウムのほか九つのシンポジウムがあった。療養病床の大幅削減という国の方針に反発する声が現場から相次ぐ一方、地域ケアにおいて療養病床が果たすべき役割や、スタッフ間の連携のあり方など、高齢社会における療養病床の将来像についても議論を重ねた。(溝田幸弘、松本寿美子)


療養病床は慢性疾患を抱える高齢者らが長期入院する施設で、医療保険対象の医療型約二十五万床と介護保険対象の介護型約十二万床がある。


国は医療費を削減するため、介護型を二〇一一年度末までに廃止。医療型については、患者を医療の必要性に応じて三段階に分ける「医療区分」を導入し、最も軽い医療区分1の患者を「介護施設での対応が望ましい」として、介護施設などへの転換を促す方針を打ち出した。現状では医療型約十五万床が残る計算となる。


今回の大会には約二千六百人が参加。メーンシンポジウムは「良質な慢性期医療を考える-療養病床の役割」と題して行われた。


最初に神戸大大学院医学系研究科の横野浩一教授が、高齢者の慢性期医療について解説。「患者を身体面だけでなく、精神面や社会、経済面と合わせて把握しなければ、“病気を治して人を治さず”になってしまう」と語り、患者を多面的に評価して治療につなげる「高齢者総合機能評価(CGA)」を紹介した。


また「高齢者の慢性疾患のほとんどが生活習慣病に根差した病変」とした上で「食事や運動、休養などの習慣は子どものころに確立される」などと述べ、若年期の習慣が健康に与える影響を強調した。


次に日本療養病床協会の木下毅会長が、医療区分の問題点を指摘。経口摂取が困難だったり重度の意識障害があったりするなど、療養病床での治療が適当と思われる症状の患者が区分1に含まれることに「これから問題になるだろう」と警鐘を鳴らした。


その一方で医療型療養病床の将来像に触れ「在宅支援機能を充実させ、地域の在宅医療の中心としてアピールしていきたい」と話した。


在宅医療との連携については、日本医師会の天本宏常任理事、日本療養病床協会の武久洋三副会長が実践例を報告した。天本常任理事は、地域を「一つの大きな病棟」ととらえ、療養病床が診療所や訪問看護ステーションなどと協力して、個々の患者の状態に応じたケアの実現を目指す取り組みを紹介。「よく『在宅か施設か』との問いがあるが、どちらか一方ではなく、行ったり来たりできるようになるのが重要」と述べた。


武久副会長は、療養病床のベッドを地域の開業医に開放し、在宅療養との連携を図ることで、開業医との相互理解が進んだと語った。


質疑応答では、慢性期医療の質を向上させるために「医師や看護師の数だけで診療報酬を決めるのでなく、理学療法士などの医療従事者を含めたチーム医療に対する評価を高めなければ」などの指摘があった。また「地域のセンターとしてやるには、夜間や休日も対応できる体制を整えなければ信頼は得られない」と、療養病床サイドの意識改革を訴える意見も出た。


神戸新聞
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