音楽療法、室蘭地方でも広がる

2004年 05月 05日 (水) | Category : 北海道の介護ニュース

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

室蘭、登別市内の福祉施設で音楽療法を取り入れた介護サービスが広がり始めている。音楽の特性を生かして体の各種機能回復やメンタルケアに役立てる療法。高齢者施設ばかりでなく障害児療育、精神科や終末期医療など幅広い分野で利用されている。


昨年春オープンした室蘭市崎守町のタカラ・デイサービスセンターの内池孝子社長は、約10年にわたって音楽療法を実践している1人。市の健康教室や障害児の教室、近隣自治体のデイケア施設でボランティアを行っている。


「療法というとちょっと堅苦しいので、私のところでは音楽レク、健康体操という言葉を使っています」と話す内池社長は、音楽療法で効果が見られた実例を挙げる。


デイケアセンターのグループ療法で出会った男性は、脳出血で右半身不随となり、言葉も話せなかった。マイクを持ってもらって歌い始めた。最初は「アーッ、ウーッ」と言葉にならない。そのうち、1小節が歌えるようになった。1年半を過ぎた今では好きな曲を歌い、人とコミュニケーションが取れるまでに回復した。


内池社長は「本人ばかりでなく、支える周囲の家族や関係者の人たちまで明るくなっていきます」と語る。


タカラ・デイサービスセンターは、利用者に自由にくつろいでもらう運営を心掛けている。音楽療法も自然に溶け込める雰囲気づくりから始める。あくまで通ってくるお年寄りの自主性を優先した取り組み。


「音楽療法と同じように人それぞれで違いますから、施設運営もなるべく個人を大切にしています」


昨年、結成された「カノン」は森本真貴子さん、四方明子さんの音楽ユニット。施設と幼稚園の合わせて5カ所で、音楽療法のボランティア活動を展開している。


登別市のケアハウスには週1回訪れている。お年寄りが好む歌、季節感を取り入れた歌をみんなで口ずさみながら、季節にまつわる話を入れる。さらに手話を交えたり、軽い体操を取り入れて進めていく。


「マニュアルがありませんから、常に対象者に合ったプログラムを2人で作ります」


音楽の合間、合間にタイミング良く「きょうは何月何日?」「小さいころ、この歌は聴きましたか」と、参加者の意思や考えを聞いたりする。リズムに合わせて手足やタオルを持って体全体の屈伸運動を続ける。この日は小1時間にわたった。


「生演奏の良さは、その場の人の動きや音域、気持ちを推し量りながら自在にできる」という2人。「テープやCDなどでは自由に変えられませんから」と話し、「1つのテーマを発展させて広まっていければ。国家試験として国に認定してもらうために頑張っていきたい」と各施設を回っている。


音楽療法の担い手たちは、もともと音楽を教えているプロが中心となっている場合が多い。しかし、「音楽教室で教えるのとは全く別世界。一緒に取り組んでいかないといけない」と話している。


室蘭民報
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