田中商店跡地に私費投入「地域に恩返し」 経営していた田中清さん

2003年 01月 14日 (火) | Category : 北海道の介護ニュース

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

昨年3月に廃業した田中商店(室蘭市舟見町1-6-16)の跡地に、在宅介護サービス大手のニチイ学館(本社東京)のケアセンターが間もなく建設される。ニチイ側は、土地の形状から跡地への建設を1度は断念したが、商店を経営していた田中商事の田中清社長が「地域に福祉施設は不可欠」と、私費で整地を決断、誘致を実現した。それだけに「マチ活性化のために役立てて良かった」と、施設のオープンを心待ちにしている。


かまぼこなど水産加工業として70年以上の歴史を誇った田中商店が、後継者難で廃業したのは昨年3月末。当時から田中社長は「地域の将来のためにも、工場の跡地を有効活用してもらいたい」と願っていた。具体的には高齢者が多いため、「できるなら福祉事業の施設に提供したい」と希望していた。


田中社長は、障害を持った従業員の再就職で伊達の福祉施設関係者からニチイ学館を紹介された。同社は平成13年4月、高砂町にデイサービス施設「アイリスケアセンター室蘭」をオープンさせている。ニチイ関係者は「蘭西地区にケアセンターはなく、立地は魅力的」と、昨年11月に跡地を視察。しかし、「土留めによる埋め立て地は、造成後70年以上が経過し、改良しなければ建設は無理」と、約680平方メートルの敷地は十分ながらも、経費負担を理由に断念した。


田中社長も1度はあきらめかけた。しかし、高齢者が多く住み、「介護認定を受けたお年寄りが遠くの施設に通うのは大変だ。何としてでも実現させたい」。旧工場解体に1200万円、土留め解体、再埋め立てなどの整地に約2000万円を、田中社長自身が投資することを決断した。


ニチイ側は「社長の好意に胸を打たれた」と昨年12月に再度視察。晴れて建設への運びとなった。土地契約は20年間の定期賃貸契約。今年6月には「アイリスケアセンター室蘭第2」としてオープンする。「田中商店は地域に育てられてきた。跡地での事業で恩返しできれば本望です」と田中社長はしみじみ語っている。


室蘭民報
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