ルポ介護の現場 制度改革半年の実情(3)

2006年 10月 18日 (水) | Category : 千葉県の介護ニュース

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

(3)広がらぬ「小規模多機能」


「ボールが来ましたよ」「そこだ、アタック!」――。


船橋市にある「ディアフレンドならしの」(杉田伸施設長)のデイサービス室。3人の利用者に介添えの職員がつき、風船バレーが行われた。車いすの女性も、職員に声をかけられながら懸命に風船を追い、笑顔を見せた。


ディアフレンドは、「通って泊まって住むこともできる」のうたい文句で介護保険に導入された「小規模多機能型居宅介護」の同市指定第1号。本人や家族の状況に合わせて柔軟なサービスを提供することで、利用者が長く地域で暮らしていけるようにすることが最大の狙いで、単一の施設でありながらデイサービス(通所)やショートステイ(宿泊)に対応し、グループホーム(居住)としての機能も果たすのが特長だ。また、市町村が自分たちの地域に必要なサービスを指定し、監査も行う「地域密着型サービス」の代表的メニューでもある。


今年7月のオープン当初から利用している達彦さん(仮名、84歳)は、認知症が見られ、要介護3。週4日、デイサービスに通うほか、その準備のための訪問介護サービスも利用。月に2回はショートステイも使っている。同居する二女の理恵さん(仮名、53歳)は「以前利用していた大人数の所では、何もせずボーッとしていたり、帰ると言ってきかなかったり。でも、ここでは、デイもショートも同じスタッフが、トイレ誘導からお茶の入れ方まで父に合わせたきめ細かい介護をしてくれるので、落ち着いて過ごせています」と話す。


しかし、施設の利用状況からは、運営上の課題も浮かび上がる。「ディアフレンドならしの」では7月のオープンから3か月が過ぎても、利用登録者は目標の25人に対して約半分の12人。杉田施設長は「厳しいとは思っていたが、想像以上」と話す。8月に京葉地区にオープンした別の事業所では、登録者は4人だけだという。


通常の在宅サービスが出来高払いなのに対し、「小規模多機能」は要介護度ごとの定額。利用は登録制で、登録者は最大25人に制限されている。要介護度の低い人の報酬は低いため、「要介護3」より重度の人を中心に、一定数の登録者を確保する必要がある。


だが、利用者の確保は容易ではない。ネックになっているのは、一つには様々なサービスを同じ事業所から受けるため、これまで個別にサービスを受けてきた施設をやめなければならないこと。さらに、原則として事業所がある市町村内の住民しか利用できないことも、利用が進まない要因に挙げられている。こうした事情から、県内の「小規模多機能」は現在11か所にとどまり、今年度の計画値である約1900人分(77か所程度)を大幅に下回っている。


このサービスを介護保険に導入するための国の議論にかかわってきたNPO法人「ちば地域生活支援舎」(東金市)の池田昌弘理事長は「今の制度は、利用者に丁寧にかかわるには規模が大きすぎることや、他の自治体からの利用ができないなど問題もあるが、在宅生活を支える基本となるべきサービス。自治体が意義を理解し、事業者や利用者に説明していくことが必要だ」と指摘している。


■小規模多機能型居宅介護■ デイサービスを基本に、ショートステイや訪問介護、グループホームなど多様なサービスを、1つの事業所が提供するもの。全体の登録者数は25人、デイサービスの利用は1日15人程度、泊まりは同5人程度。報酬は、サービスを何回使っても変わらない定額制で、「要支援1」で月約4万5000円、「要介護5」だと同28万円強。これまで県が行ってきた事業所の指定、監査も市町村が行うことになった「地域密着型サービス」の目玉だが、全国的にも整備が進んでいるとは言い難い。


読売新聞
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