受け皿づくりを早急に コムスン問題

2007年 06月 10日 (日) | Category : 青森県の介護ニュース

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

訪問介護最大手のコムスンが介護事業所の指定を不正に取得していた。厚労省は、全国にある同社の介護事業所の八割に当たる約千六百カ所について、来年四月から二〇一一年度までの間に順次、指定を打ち切るよう都道府県に通知した。県内は五事業所が対象になっている。


指定打ち切りは介護保険サービスからの撤退を意味する。コムスンの親会社のグッドウィル・グループの折口雅博会長は、コムスンの売却についてグループ外の同業他社へ一括譲渡し、従業員全員もそのまま移す案を最優先に検討しているという。当たり前のことだ。


サービスを利用している人の不安をなくすために、自治体や厚労省とも連携して、受け皿づくりを急いでもらいたい。高齢化時代を支える介護事業は、「経営第一主義、福祉は二の次」であってはならない。


コムスンは、二十四時間三百六十五日体制の老人介護サービスを掲げて急成長した。一方では、なりふり構わない営業方法や成果主義を展開したといわれている。


同社の不正は、全国の八事業所で発覚していた。そのなかには、弘前市にあったヘルパー派遣事業所も含まれている。この事業所は〇六年七月の県への指定申請時に虚偽報告していた。県がことし立ち入り調査したら、三人必要なヘルパーが二人しかおらず、一人は雇用契約自体が結ばれていなかった。


県は介護保険法に基づく指定取り消し処分に当たると判断し手続きを進めたが、直前に同社は事業所の廃止届を出した。東京など他地区でも同様のやり方で処分を免れていた。厚労省が悪質な処分逃れに当たると判断したのは、当然だ。


二〇〇〇年度から始まった介護保険制度は、民間からの参入を積極的に促してきた。業者の数やサービスの量を確保することを優先したきらいがある。


問題はコムスン一社だけにとどまらない。別の大手二社も介護報酬の不正請求で、東京都から業務改善勧告を受けている。今後は、サービスの質の重視へ向けて監査体制の強化が不可欠といえる。


グッドウィル・グループは当初、コムスンの全事業をグループ内の企業に譲渡すると発表した。厚労省はこの譲渡について違法ではない、との見解を示した経緯がある。


指定取り消し処分を逃れるために事業所の廃止届を出すことの是非も含めて、制度上の問題点を洗い出す必要がある。場合によっては、法改正も視野に再発防止策を考えていくべきだ。


介護の現場の労働環境は、かなり厳しいといわれている。低い賃金で、長時間働かざるを得ない状況では、退職者も多くなる。人手不足がますます深刻になる。


総人口に占める六十五歳以上の割合は、〇五年には20.1%と五人に一人だ。五五年には、40%を超え二・五人に一人になるという。「前例のない高齢化社会が現出する」と、政府の白書はいう。


こうした超高齢化社会の到来を見据えれば、介護事業者の質の向上や人材確保のほか介護保険制度の在り方も問われよう。


東奥日報
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