介護報酬不正請求で指定取り消し

2004年 03月 29日 (月) | Category : 青森県の介護ニュース

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

青森市の介護サービス事業所で介護報酬が不正請求されていた問題で、県は二十九日、介護保険法に基づき、札幌市豊平区の事業者「南武ビルド」(村中武社長)が運営する青森市石江の介護事業所「老人訪問看護ステーションいこま」の二つの事業の指定と、同事業所に勤務する介護支援専門員(ケアマネジャー)二人の資格登録を取り消した。同事業者は看護師の資格がないのに訪問看護サービスを提供するなどし、数十万円を不正請求したとされる。介護保険事業者の事業指定取り消しは県内で初めて。


県によると、この事業者は看護師らが療養上の世話や診療の補助を行う「訪問看護事業所」と、介護支援計画を作成する「居宅介護支援事業所」の二事業で二〇〇〇年四月に県指定を受け、自ら作成した介護支援計画に沿って訪問看護のサービス提供をしていた。


訪問看護事業では看護師、准看護師の資格がない者が血圧を測定するなどの医療行為を行い、介護報酬を不正請求した。また、配置が義務付けられている管理者には勤務実態がなかったという。


居宅支援事業では、週一回の訪問看護が適当な要介護者に対して、週三回のサービスを実施するなど不適切な介護支援計画を策定。義務付けられたケア会議を開けなかった場合に必要な減算をせずに不正請求した。


また、ケアマネジャー二人が虚偽の介護支援計画を作成するなどして不正にかかわった。


この事業者の不正については、同事業者の関係者から相談を受けた県が昨年十二月二十五日に立ち入り監査して発覚した。不正請求額は現在精査中だが、数十万円から百万円前後に上るとみられる。確定後、県は不正請求分の返還を求めるよう保険者である青森市へ指導する。


介護保険制度が〇〇年に施行して以来、県内の事業者、ケアマネジャーが指定を取り消されるのは初めて。処分を受けた事業者は再指定が認められず、ケアマネジャーは五年間、資格試験を受けられない。


県は二十九日現在、事業者側と連絡が取れていない状態だが、「三月十日に行った聴聞で、事業者側は不正に関する県の指摘をすべて認めた」としている。事業者は今月中旬から業務を休止しており、利用者は他事業者が引き継ぐことになる。


チェック体勢 整備急務


「いこま」は訪問看護事業所と居宅介護支援事業所の二枚看板を掲げ、偽装した介護支援計画に基づきサービスを提供していた。今回のようにサービス事業者が介護支援計画も作成しているケースは県内にも多いが、審査・支払機関である県国民健康保険団体連合会(青森市)は「介護支援計画が適正かどうかまでは調べきれない」と現行制度の限界を示唆する。介護保険制度の導入以降、制度を悪用する事例が全国で相次いでおり、チェック態勢の早急な整備が求められる。


県国保連には事業者から毎月膨大な枚数の介護報酬請求書が届く。そこでは介護支援計画とサービス提供の実績を付き合わせてチェックし、計画から逸脱したサービスを機械が自動的に判定する仕組みになっているが、「介護支援計画自体を偽装されればどうしようもない」(県国保連)という。保険者である青森市は「市町村には調査権限すらなく、不正は内部告発によってしかつかめない状況」と、制度の不備を指摘する。


現在、介護保険制度では痴ほう性高齢者グループホーム事業だけに、第三者の客観的な評価情報を提供する「第三者評価システム」が導入されている。国は順次サービス対象を広げ、二〇〇六年にも全サービスへ導入する方針だが、県内でも苦情や相談は増加傾向にあり猶予はない。第三者評価のプロセスを通じて、事業者のサービス適正化、不正請求防止を働き掛けていく必要がある。(社会部・阿部泰起)


県内の事業者とケアマネージャー


介護サービス事業は訪問介護、福祉用具貸与など16種類あり、現在2968事業者が県の指定を受けている。介護支援計画を作成するケアマネージャーの有資格者は3497人。実務者はその3分の1ほどで、ほとんどが事業者などに勤務する。


東奥日報
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