(27)希望 遺言書にまとめる

2006年 06月 07日 (水) | Category : 転ばぬ先に

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

若葉さん夫妻(仮名、70歳代)は、遺言の相談をしている。夫妻には子どもはいない。弁護士がまとめた遺言書(案)をもとに再度話し合い、最終的に夫婦それぞれが次のような遺言を公正証書で作ることにした。


そのうち夫の遺言(妻の遺言は省略)は次の通り。


第1条 私が妻より先に亡くなったときは、〈1〉不動産は全部妻に相続させます〈2〉不動産以外の預金・貯金その他の財産については、遺言執行者がその中から、税金、医療費、介護費、供養料、遺言執行に要する費用など必要な支払いをしてください。その残りをすべて妻に相続させます。


第2条 私が妻と同時、あるいは妻より後に亡くなったときは、〈1〉不動産を含むすべての遺産を遺言執行者において換金し、税金、医療費、介護費、供養料、遺言執行の費用など必要な支払いをしてください〈2〉残りの遺産のうち、○割を○○研究所(住所・略)に遺贈します。がんの研究に役立ててください。○割は○○センター(住所・略)に遺贈します。目の不自由な人のための朗読活動に役立ててください〈3〉右の遺贈先への遺贈ができないときは、遺言執行者において、同種の団体に遺贈してください。


第3条 私の葬儀は行わないでください。


第4条 遺言執行者は、遺骨を○○寺の永代供養墓に納骨し、○○寺に永代供養料として金○○万円を支払ってください。


第5条 遺言執行者として下記弁護士を指定します。遺言執行者は不動産の名義変更・売却、預貯金の名義変更・解約、債務の支払いその他この遺言を執行するために必要な権限を有します。(中山 二基子、弁護士)


読売新聞
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