(26)遺言執行者を決めておく

2006年 05月 24日 (水) | Category : 転ばぬ先に

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

若葉さん夫妻(ともに70歳、仮名)は、公正証書遺言の相談をしている。


弁護士「これまで、〈1〉自分が先に亡くなった場合〈2〉夫婦が同時に亡くなった場合の遺言を考えてきました」


夫「〈1〉については、私も妻も、残された相手にすべて相続させることにしました」


妻「〈2〉の場合は、主人はがんの研究団体、私は目の不自由な人のための朗読活動の団体に遺贈します」


弁護士「では、〈3〉自分が後に残された場合を考えましょう」


夫妻「財産が残っていれば、世の中に役立てたいのです。遺贈先については、どちらが長生きしても、夫婦両方の希望が反映されるものにしたいと思います」


弁護士「〈2〉、〈3〉の場合、自宅不動産は現物を遺贈しますか、売ってお金に換え、お金を遺贈しますか」


夫「お金であげたいと思います。でも、遺贈する額については迷いますね」


弁護士「額を具体的に遺言に書いたとしても、必要になればそのお金は使わざるを得ません。遺産から必要な費用を払った残りの財産の〇割を遺贈する、というように割合で書いてはどうでしょうか」


夫「そうしておけば、残った財産が少なくても遺贈できますから安心ですね」


妻「私たちは葬儀をしてほしくないのですが」


弁護士「それも書いておけば、親族に説明するとき、助かると思いますよ」


夫「二人とも亡くなったとき、誰に遺言を実行してもらうのですか」


弁護士「遺言執行者を決めて、自宅の売却や預金の解約、遺贈の実行を頼んでおきます」


妻「亡くなった後の入院費の支払いや納骨・供養料の支払いも頼めますか」


弁護士「はい。では、遺言書にまとめてみましょう」(この相談の続きは次回に掲載します)(中山 二基子、弁護士)


読売新聞
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