(24)夫婦、お互いが遺贈先
わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。
2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。
わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。
人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。
そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。
介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。
今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。
若葉さん夫妻(ともに70歳、仮名)は、今年こそ遺言を書こうと考え、弁護士に相談した。
夫「70歳になったので、キチンと公正証書で遺言を残そうと思います。でも、なかなか考えがまとまらなくて……」
弁護士「どんな遺言を書くかは、老後をどう暮らすか、誰の世話になるかに関係します。この点は夫婦で話し合いましたか」
夫「私たちには親も、子どももいません。どちらかが身体が不自由になったら、二人で老人ホームに入るつもりです。親族の世話になるつもりはありません。そのためにも、私が亡くなった後、妻が困らないようにしておきたいのです」
弁護士「それでは、まず、夫婦のどちらが先に亡くなっても、残された方が全部遺産を相続できる遺言を作りましょう。遺言は一人一人書かなければなりません」
妻「その遺言があれば、主人のきょうだいからは請求されませんか」
弁護士「きょうだいには遺留分がありませんから、遺言どおりになります」
夫「私たちは時々、海外旅行をします。もし、二人とも事故に遭ったときはどうなりますか」
弁護士「不幸にして、夫婦同時に亡くなられた場合は、この遺言は効力を生じません。その場合は、それぞれの法定相続人、つまり夫の遺産は夫のきょうだいなどの相続人、妻の遺産は妻のきょうだいなどの相続人がそれぞれ相続します」
夫妻「私たちはきょうだいに残すつもりはありません」
弁護士「それでは夫婦が同時に死亡した場合の遺言も作りましょう。夫は夫の遺産を、妻は妻の遺産を、誰に贈るか決めて遺言を書くのです。遺贈先は夫婦で違っても構いません」(この相談の続きは次回に掲載します)(中山二基子、弁護士)
読売新聞』
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