(16)離婚、弁護士とよく相談を

2005年 12月 19日 (月) | Category : 転ばぬ先に

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

定年を機に、夫と離婚したいと考えている妻は少なくないようだ。夫の暴力や浮気など、明らかに夫に有責性がある場合は、離婚も認められやすい。しかし、「浮気も暴力もないが、夫は私を一人の人間として認めてくれない。私も夫の定年を機に自由に生きていきたい」という場合は、それほど簡単ではない。夫は自分が悪いことをしたとは思っていないので、なかなか離婚に応じないし、裁判所も簡単には離婚を認めないからだ。


モミジさん(仮名、67歳)は別居して7年目にやっと、裁判で離婚が認められた。夫は調停でも裁判でも、「暴力はもちろん、浮気もしていない。生活費も入れている。離婚される理由がない。妻さえ反省すればやり直せる」と言い続けた。


モミジさんが決意したのは、ことあるごとに、「誰のおかげで食べさせてもらっているんだ」と夫に言われることに耐えられなかったからだ。その言葉に妻がどれほど傷ついてきたかを、夫は最後まで、理解できなかったようだ。モミジさんが何か言っても、妻の気持ちや生き方などは取るに足らないこととして片付けられた。夫婦の溝は深まるばかりだったが、夫はそれさえ、気づかなかった。


モミジさんに限らず、子供が成人し、夫が定年を迎えたら、母親の役割とともに妻の役割も終えるので、離婚しようと考えている女性は少なくない。


しかし、離婚に踏み切るにあたっては、夫は応じるのか、応じない時は裁判で勝てる見込みはあるのか、財産分与や年金分割の見込みはどうか、別居中の生活費はどうするのか……。こうした問題を、弁護士ともよく相談し、見通しを立てておくことが重要だ。(中山二基子、弁護士)


読売新聞
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