(3)悪質業者のワナ後見人が解決

2005年 05月 02日 (月) | Category : 転ばぬ先に

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

「ちょっと入って私の通帳を見てよ」。アヤメさん(78、仮名)を訪問した保健師は、こう言われて驚いた。今まで何度訪問しても、玄関先で追い返されていたからだ。


初めて通された部屋は、弁当の空き箱、新聞、衣類などで、畳がほとんど見えない。部屋の隅には羽毛布団が3組、袋に入ったまま積まれている。


通帳を見ると、1年前に2000万円を超えていた預金は、毎月100万、200万円とおろされて、残高は1万円にも満たない。アヤメさんは、「どうしてこんなに減ったの?」と聞くが、聞きたいのはこちらの方だ。


新聞にまざって、何枚かの領収書が目に入った。「床下補強工事費」「シロアリ駆除費」のほか、ただ、「工事代」というものもある。悪質業者のカモにされたのだ。


アヤメさんは、「お金がもったいない」「ヘルパーも心配」といって、介護保険を使っていない。ケアマネジャーやヘルパーが入っていれば、もっと早く気づいて何かできていたかもしれない。


実は昨年、アヤメさんの認知症(痴呆(ちほう))に気づいた保健師が、甥(おい)に成年後見制度の利用を勧めた。甥は、「大丈夫ですよ」と関心を示さなかったが、今回、通帳を見て驚き、制度の必要性を痛感したようだ。


この制度を利用するには、周りの親族の理解が欠かせない。だが、大きな被害に遭わなければわかってもらえないことが多い。成年後見人がつけば預金を管理し、不利益な契約をしても、後見人が取り消すことができる。


「それにしても、私たちは家に入れてくれないのに、どうして訪問販売業者には預金通帳まで見せるのかしら」。保健師にはそれが一番、ショックだった。(中山 二基子、弁護士)


読売新聞
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