(2)3つの備えで安心

2005年 04月 18日 (月) | Category : 転ばぬ先に

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

アルツハイマー病の妻のために、老人ホームの入居金をおろしに銀行に行った椿さん(仮名、72歳)。後見人をつけなければ妻の預金はおろせないと言われて、早速、成年後見制度の相談に、弁護士会の「財産管理センター」に出向いた。


弁護士「この制度は、判断能力が不十分な成人を後見(援助・保護)するための制度です。その一つが既に判断能力が不十分な人を援助するための『法定後見制度』です。もう一つが、将来、判断能力が不十分になった時に備えておく『任意後見制度』です」


椿「家内には法定後見制度ですね」

弁護士「はい。あなたが家庭裁判所に『後見の申し立て』をすると、成年後見人が選ばれ、奥様のため財産管理や介護の手配をします」

椿「それで預金がおろせるのですね。私は家内を見ていると、自分のボケた時が心配になりました」

弁護士「あなたには任意後見制度が役立ちます。信頼できる後見人を決めて任意後見契約を結び、判断能力が低下した後の財産管理を頼んでおくのです」

椿「契約後もボケない間は私が管理していいのですね」

弁護士「もちろんです」

椿「私は高血圧なので、体が不自由になって財産管理ができなくなることも心配です」

弁護士「そのために『財産管理契約』があります。体が不自由で銀行に行けない時や、入院した時に役立ちます」

椿「皆さん、この二つで備えるのですか」

弁護士「実はもう一つ、ホームロイヤー(かかりつけ弁護士)契約があります。日常生活でちょっと心配事があった時、ホームロイヤーに気楽に相談できます」


この三つで備えておけばいいと知り、椿さんは安心したのだった。(中山 二基子、弁護士)


読売新聞
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