認知症サポーター/上 北海道本別町 住民の手で見守り

2008年 01月 05日 (土) | Category : 認知症

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

国の認知症サポーター100万人計画が始まって3年。高齢化が進展し、認知症高齢者が確実に増えるなかで、現在、全市町村の3分の1にあたる623の自治体がサポーター養成に取り組み、効果を上げている。注目される取り組みを2回に分け紹介する。【有田浩子】


現在500人、倍増目指す--もの忘れ、怖くない町に


北海道東部の本別町。畑作中心の内陸の町で、夏と冬の寒暖差は60度にもなる。人口約9000人で、高齢化率は30%を超える。


認知症サポーターの新津(にいつ)直子さん(43)が昨年12月、町の総合ケアセンターから車で約5分の男性(90)宅に着くと、男性は自分の部屋に招き入れた。ベッドサイドには新聞や読みかけの文庫本があった。


日ごろ、町内のグループホームで働く新津さんは月2回、男性宅を訪問する。もっぱら聞き役だ。先の大戦中の旧ソ連国境での軍隊経験や生まれ故郷の話など繰り返しが多いものの、表情は穏やか。「(新津さんに)会えるのを楽しみにしています」と男性は話す。


男性が認知症と診断されたのは3年前。同居の息子家族が、男性の話すことが時に理解できなくなり、要介護1に認定された。通常のデイサービスを週3回の他、町の「やすらぎ支援事業」に登録、新津さんら有償ボランティア(利用料1時間100円)の見守りを受けるようになった。症状は以来、安定しているという。


本別町の取り組みは介護保険導入前の99年にさかのぼる。それまで、認知症が疑われる高齢者の家族から相談を受けても、入院か施設入所を勧める程度。自宅で過ごす認知症の高齢者や家族を支える手立ては確立しておらず、同年、実態調査を実施した。その結果、在宅の要介護高齢者で認知症または認知症と思われる行為がある高齢者は4割に上ることが分かった。


翌年、町は在宅介護支援センターに「もの忘れなんでも相談室」を設置。02年には、認知症の家族支援の一環として、やすらぎ支援事業を始めた。こうした取り組みが土台となり、05年に国のサポーター計画のモデル自治体に選ばれた。サポーターは約500人。町民の18人に1人がサポーターだ。


「認知症については何も知らなかった。講習を受けて、認知症には予防も治療もあるんだと初めて知り、これは仲間に知らせないと、と思った」


廃止された「ふるさと銀河線」の本別駅の山側に位置する山手町地区。05年秋、地元企業を退職してまもない白戸洋さん(63)は、サポーターの先生役となるキャラバン・メイトの養成講座を受けた。


一気にのめり込み、その1カ月後には早くも、自治会福祉部11人のサポーター養成の講師を務めた。その後も、自治会の65歳以上の高齢者を対象にした認知症講演や、保健所と共催で予防講座の開催に奔走した。


かたい内容ばかりでは参加者は限られ、継続も難しくなる。そこで、クラブ一本で高齢者も手軽に楽しめるパークゴルフや、バーベキューの料理教室を講座とセットにするなどの趣向を凝らした。対象の高齢者は約40人だが、「最近になって出てきてくれた人もいる」といい、閉じこもりがちな高齢者への働きかけが実を結びつつある。白戸さんは「これからは認知症の人を出さないことが目標」と語る。


要介護認定で、「要支援」は昨年3月までの6年間で、全国では2・5倍に増えたが、本別町は1・7倍にとどまる。町総合ケアセンターの飯山明美所長補佐は「サポーターを倍増させるのが次のステップ。もの忘れしても安心して散歩できるまちにしたい」と話す。


◇認知症サポーター100万人計画


認知症の高齢者が2025年に現在の倍の323万人になるとの予測を見据え、国が05年度から5カ年計画でスタートさせた。養成するのはサポーターと、サポーターの講師役を務めるキャラバン・メイト。その数は07年9月末現在で約27万人(うちメイト約1万4000人)。養成講座はサポーターが90分、メイトが6時間。修了者には、認知症支援の意思を示すオレンジ色のブレスレットが手渡される。約6割が女性で主力は60代。都道府県では岩手が最も多い。


毎日新聞
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