認知症ケアの重要性を訴えるシルビア王妃
わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。
2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。
わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。
人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。
そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。
介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。
今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。
穏やかに 積極的に 慈善活動
「認知症を理解すれば、ご両親を助けることができますよ」
ストックホルム中心部のスウェーデン王宮。応接間に日本人記者団を迎え、穏やかな口調で語り始めたシルビア王妃(63)。国賓として来日、26日に都内で開かれる認知症を考えるシンポジウム出席を前に、認知症ケアの重要性を訴えた。かたわらの夫、カール16世グスタフ国王は、この問題が「彼女のライフワーク」と話す。
認知症との出合いは、母親の発症だった。「母の態度が突然変わったのです」と戸惑いの日々。専門医と話すうちに深刻さを知り、1996年にストックホルムで認知症専門施設「シルビアホーム」を開設、緩和ケアを始めた。外国の医師や看護師も受け入れ、その活動は「王族の慈善活動」の域をはるかに超える。
王妃はドイツ人の父とブラジル人の母を持つ。76年に国王と結婚した際、「外国人の平民王妃」との批判も浴びた。だが、「大切なことは人々と会い、理解すること」と心に刻み、国内を回り、国民と接してきた。認知症ケア以外でも、少女時代にサンパウロで貧困層の子供らの生活を目撃したことが原体験となり、児童ポルノ問題にも取り組む。99年には、子供を性被害から守る財団を自ら創設した。
欧州各国の王室が存続に頭を悩ませるなか、同国では王室支持派が7割を超える。その要因は、王妃の気さくな人柄と積極的な慈善活動が国民の心をつかんだからだ。
今回の訪日は1週間。意欲を尋ねると、「日本で認知症問題への関心を高めたい」と語った。
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