認知症ケア 成年後見制度

2006年 04月 26日 (水) | Category : 認知症

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

財産守る番人


埼玉県富士見市で昨年5月、認知症の姉妹が悪質リフォーム業者の被害にあう事件が発覚した。認知症高齢者の財産をどう守るのか。老後を安心して過ごすための取り組みを取材した。(阿部文彦)


契約解除


「本当にあの施設にいたいのですか」


東京都内のファミリーレストランで、後見人の司法書士の問いに、A子さんは弱々しく応えた。


「いえ、そう言えと、施設の人に言われたんです。本当は出たい」


都内で独り暮らしをしていた80歳代のA子さんが、近所の短期入所施設を利用し始めたのは昨年3月。約1か月後、施設の経営者が、短期入所のはずのA子さんの口座から「入居一時金」として100万円を引き出した。


A子さんの認知症の症状が進んでいたため、短期入所施設を使い始める直前に、親族が成年後見制度の利用を決めていた。後見人に選任された司法書士は、早速施設と交渉した。


「短期入所という約束のはず。判断能力の低下につけ込んだ不当な契約では」


だが、施設側は、「親族が承諾し、A子さんも入居を希望している」と、契約の正当性を主張。A子さんも「ここにいたい」と繰り返した。


ファミリーレストランでA子さんの真意を聞き出した司法書士は、A子さんの居室から荷物を運び出し、翌日には短期入所契約の解除通知を送った。


年金暮らしのA子さんにとって100万円は虎の子の財産だが、施設が返還を拒否したため、損害回復を求める民事訴訟が係争中だ。「本人にとって最適の施設はどこなのかを判断し、必要があれば訴訟を起こすことも後見人の役割」と、この司法書士は話す。


普及のネック


国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた消費者被害のうち、70歳代の認知症高齢者に関する相談件数は、ここ10年で約10倍の4091件(2004年度)に増えた。


後見人に契約の同意権や、不利な契約の取消権などを与える成年後見制度は、2000年4月、介護保険と同時に施行された。後見人の申立件数は1万7246件(同)で、人口の1%が利用するドイツに比べて少ない。普及のネックは後見人の受け皿不足だ。


後見人は、親族以外だと弁護士、司法書士などの専門職が中心だが、市民でもなることができ、「市民後見人」の養成が各地で始まっている。


東京都は先月、初の「社会貢献型後見人養成講座」を開き、約60人の受講者が、本人意思の確認、財産の管理方法などの必要事項を確認した。


成年後見制度の活用には、地域ぐるみの取り組みも欠かせない。


読売新聞
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