若年性アルツハイマー病(9)

2006年 04月 14日 (金) | Category : 認知症

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

心に残る会話 闘病支える


今回の連載では、若年性アルツハイマー病の患者と家族3組の姿を追った。


3組とも、名前や写真の掲載に快く応じてくれた。「多くの人に、病気を理解してほしいから」。その勇気に感謝したい。


若年認知症の患者・家族会も増えている。札幌市で先月開かれた「家族会準備会」では、患者3人と家族ら約20人が闘病や経済面の悩みなどを語り合った。


妻を介護する夫は「症状が進んだ若年認知症患者は障害年金が受けられるのに、医師や自治体職員が知らず、手続きできないこともある」と語った。


昨年、アルツハイマー病と診断された50歳代の男性は「自分のこれからを知るのが怖くて、本当は来たくなかった。でも、頑張っている人たちに会えてうれしい」と、涙をぬぐった。


準備会では介護保険を使ったデイサービスなどの充実を求める声もあがった。


若年認知症の家族会「彩星(ほし)の会」(東京都港区)は、医師や作業療法士らと連携し、2003年末から若年認知症専門のデイサービスを試験的に続けてきた。


月に1度、5人前後の患者が参加。バドミントンなど運動のほか、“まちづくり視察”をテーマにした周辺散策、パソコンでの会報作りなど、趣味や職業経験に応じた活動をしている。


同会を支援する東京女子医大病院の作業療法士、比留間ちづ子さんは強調する。「認知症になっても、感情は保たれる。患者の意思を尊重したかかわり合いが何より大切」


この連載で紹介した広島市の松本恭子さん(49)から、認知症と闘う夫と「心の記念に残る会話ができました」と電子メールが届いた。恭子さんの中学教頭就任が決まり、夫の照道さん(57)が入院する広島大病院の病室で、お祝いのケーキを二人で食べたという。


「母さんはすごいなぁ、教頭先生か。おめでとう。僕はだめになった……」


「父さんが頑張ってくれるけんよ、母さんが仕事できるのは。ありがとう、父さん」


「大丈夫だけえ。僕ががんばるけえ。心配せんでもええけえ」


夫婦はこれからも、ささやかな「心の記念」を積み重ねていくだろう。それが、この病気と闘い抜くための「最強の武器」だから。(佐藤光展)


■若年認知症の家族会■


彩星の会(東京都港区) (電)03・3403・9050

愛都(アート)の会(大阪府大東市) (電)090・3658・3594(相談連絡先) 072・863・5064(事務局ファクス)

陽溜(ひだ)まりの会 広島市) (電)082・240・5605

呆(ぼ)け老人をかかえる家族の会(本部・京都市) (電)0120・294・456(電話相談・平日午前10時~午後3時)


読売新聞
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