認知症ケア 地域で暮らす

生きる力、見守る


認知症(痴呆(ちほう))がある程度進むと、家族だけで介護をすることは困難だ。認知症になった場合、どこでどのようなケアを受けながら暮らすことになるのか。(林真奈美)


「Kさん、ネギ刻みますか?」「卵は使うんでしたか?」


東京・足立区の「グループホーム千住大川」。1階の食堂で、昼食の準備が始まった。この日のメニューはお好み焼き。職員が入居者に声をかけて作業に誘い込み、見守りながら、必要な手助けをする。


グループホームは、認知症の高齢者が少人数(5~9人)のグループ単位で共同生活を送る住居。家庭的な環境のもと、なじみのスタッフとともに生活することで、症状の進行を穏やかにし、家族の介護負担も軽減する。「認知症介護の切り札」として急増し、今では8000か所を超える。


「千住大川」は2階建てで、内部は二つに区切られている。それぞれ9人のお年寄りが入居し、日中は2、3人の職員が担当する。1階に食堂、2階に入居者の個室(6畳程度)がある。


食事作りや買い物、洗濯など家事全般を原則として入居者自身が行う。「持っている能力を生かし、できるだけ自立して生活できるようにすることが目標」と、運営する「すこやか福祉会」の宮崎和加子・グループホーム部長は説明する。


「ダメと言わない」がモットーで、入居者の行動に制限はない。起床や就寝の時間は自由。飲酒もOK。日中は玄関の鍵をかけず、好きに外出できる。近所の喫茶店やすし屋ではツケもきく常連だ。外出には職員が付き添うが、「一人で出歩ける」という自尊心を傷つけないため、こっそり後をつける場合もある。


「徘徊(はいかい)といっても、家に帰る、会社に行くなど本人なりの理由がある。問題行動どころか、生きる力として大事にすべきです」と宮崎部長は強調する。


歌を歌う人、職員と話し込む人、居眠りをする人。福岡市の「第二宅老所よりあい」では、10人のお年寄りが思い思いに昼食後の時間を過ごしていた。午後5時、5人が自宅に送られていった。


介護保険適用のデイサービスを中心に、保険外でショートステイと居住サービスを提供し、認知症のお年寄りの在宅生活を支援している。デイサービスの登録利用者は計15人。うち8人が必要に応じてショートステイを利用。ほかに5人がここで暮らす。「認知症の人は、慣れない場所では混乱し不安になる。重度化する前から通ってなじみの場所になれば、やむなく宿泊や居住に移行する場合も混乱が少ない」と、村瀬孝生所長は言う。


こうした宅老所は1980年代後半から登場。これをモデルに、4月から介護保険サービスの一つとして導入されたのが「小規模多機能型居宅介護」だ。デイサービス、ショートステイ、訪問介護を提供。ただし居住は含まない。「新たな切り札」と期待されるが、事業所の指定権限は市町村にあり、普及に地域差が出てきそうだ。


読売新聞
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