「支援」啓発 ひと工夫

2006年 03月 06日 (月) | Category : 認知症

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

福祉大会と映画祭同時に認知症サポーターを養成


毎日の生活に支援が必要な人たちについて、もっと一般市民に知ってもらおうと、啓発活動を工夫する動きが出てきた。年齢や障害の有無にかかわらず、助け合いながら生き生きと暮らせる“共生社会”の実現を目指す取り組みとしても参考になりそうだ。(安田武晴)


交流


2月17日から19日まで、大津市で開かれた「アメニティーフォーラム」。障害者福祉をテーマに、1998年から毎年開催されているが、昨年から「びわこアメニティー映画祭」を同時開催している。


フォーラムに参加する福祉施設の職員らに、映画を通じて命の大切さや他人を思いやる気持ちを学んでもらい、映画を見に来た人には、車いすの人を見かけたりすることで、障害者の世界の一端を感じてもらおうという一石二鳥の試み。どちらも福祉職員らで組織するNPO法人「全国地域生活支援ネットワーク」などで作る実行委員会が主催した。


今年の映画祭は、韓国の恋愛映画「八月のクリスマス」など一般向けの作品を中心に選び、障害者をテーマにしたものは、上映10本のうち1本だけに。事前に、情報誌「ぴあ」でPRするなどして広く来場を呼びかけた。同ネットワークでは「事務局に問い合わせが相次いだ。反響は予想以上」と、手応えを感じた様子。


障害者の支援や就労について講演や討論が行われたフォーラムには、全国から福祉関係者など約1600人が参加。隣の小会場で開かれた映画祭には延べ約900人が訪れ、二つの行事の参加者同士の接触や交流もあったようだ。


プロデューサーを務めた映画製作・配給会社「シグロ」の山上徹二郎代表は「来年は、映画祭の中にフォーラムがあるという感じにしたい。映画監督や俳優のトークショーなども考えている。福祉の世界と、その外側の境界線を壊し、より開かれた映画祭を目指す」と意欲を見せている。


キャンペーン


認知症(痴呆(ちほう))の分野では、厚生労働省が今年度、「認知症を知る1年」と銘打ち、認知症の人の地域生活を支える市民サポーター養成を中心にしたキャンペーンを展開している。サポーターは、市町村などが、市民向けの講座を開いて養成。受講者には、証明書代わりにオレンジ色の腕輪を渡す。すでに約2万2000人がサポーターになった。09年度末までに100万人を目指している。


認知症高齢者は現在、全国に約170万人。2030年には350万人に達する見通しだが、「認知症になると、何もわからなくなってしまう」といった誤解がまだ根強い。厚労省は10年かけて誤解を払しょくし、認知症になっても安心して暮らせる地域づくりを全国で進める方針だ。


異色の講演


鳥取県米子市で今年1月に開かれた「Japan Sea福祉フォーラム」では、建築家の黒川紀章さんが「共生の思想」と題して講演。参加者は約800人で、福祉関係以外にも約100人に来てもらうことができた。主催した地域活動交流広場「あかり」の渡部恵子・代表世話人は「障害・福祉に詳しくない人にも、共に生きることの大切さを感じてもらえたと思う」と話している。


東洋大学ライフデザイン学部の北野誠一教授は「障害者も認知症高齢者も、これからは施設でなく、地域社会で暮らすのが主流になる。そのためには市民の理解や協力が不可欠だ。福祉関係者も、もっと意識を外へ向けてほしい」と望んでいる。


読売新聞
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