認知症 理解深めて支え合おう

2005年 08月 25日 (木) | Category : 認知症

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

体験を交えた寸劇 小学校で絵本教室


周囲の人の理解があれば、認知症(痴呆(ちほう))になっても自宅で穏やかに暮らしていけることがわかってきた。そこで、認知症への理解を深めようという活動が、民間や行政で盛んになってきている。厚生労働省では今後、全国で100万人の「認知症サポーター」を養成する計画をスタートさせた。


「おなかがすきました」

「今、食事したばかりでしょう」

「食べてないわよ」


認知症の患者の家族会やボランティアグループなど31団体でつくる川崎市認知症ネットワークでは、認知症への理解を求めようと素人劇団を設立し、地元のセミナーなどで寸劇を披露している。


劇には介護している家族の実体験から生まれたエピソードが盛り込まれている。例えば、置いたはずの財布がないと騒ぐ。自宅にいるのに「家に帰る」と飛び出す。お年寄りが徘徊(はいかい)するシーンでは、行方不明情報を関係機関に緊急連絡する「徘徊高齢者SOSネットワーク」の説明も行われる。


「かつて認知症は理解されず、お年寄りも家族も家の中にとじこもりがちだった。でも、みんなが理解し、支え合っていけば、認知症になっても堂々と暮らしていけるのです」と川崎市認知症ネットワーク代表の柿沼矩子(のりこ)さんは言う。


認知症への理解を深めようという動きは各地で見られる。滋賀県近江八幡市では昨年から、ケアの専門家が講師になり、スーパーや金融機関、警察などで、認知症のお年寄りへの対応法についての講座を開催している。


「家族だけでは、認知症を支えることはできない。地元の企業にも支え手になってもらいたい」と市健康推進課。受講者からは「認知症になった本人が一番不安だとわかった」「窓口での事務的な対応は改めよう」などの感想が寄せられている。


福岡県大牟田市では、認知症をテーマにした絵本「いつだって心は生きている~大切なものを見つけよう~」を作り、市内の小中学校で絵本教室を開催している。


こうした動きを受け、厚生労働省は今年度を「認知症を知る1年」と定め、地域や企業、学校などで講座を開催し、受講者を「認知症サポーター」と認定する事業を始める。2009年度までに、100万人の認知症サポーターを養成する計画だ。


さらに「認知症であることをためらいなく公にできる」「徘徊する人を町ぐるみで支援している」などの条件を満たした「認知症になっても安心して暮らせるモデル地域」を全国に作るとしている。


現在、85歳以上の20%に認知症があるといわれ、その人数は約160万人に上る。今後、20年間で倍増することが予想されている。


認知症への理解を進める活動を応援しようと、キャスターの生島ヒロシさんら著名人や、全国銀行協会などの企業団体なども「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」を結成。議長を務めるさわやか福祉財団理事長の堀田力(つとむ)さんは「認知症は本人、家族だけではなく、国民全体の問題です」と訴えている。


読売新聞
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