安全な福祉用具を選ぶための目安は
わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。
2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。
わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。
人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。
そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。
介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。
今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。
安全な福祉用具を選ぶための目安は。
◇JISマークを確認 11月にも、手動車椅子・介護ベッドに表示
◇死傷事故の増加受け導入
福祉用具にもJIS(日本工業規格)マークが表示されることになった。対象は「手動の車椅子」と「在宅向け電動介護用ベッド」。7月末に製品の規格を審査する認証機関も決まり、早ければ11月ごろにもマークがついた製品がお目見えしそうだ。
これまでも福祉用具は規格があったが、認証機関がなかったため、製品にJISマークが表示されていなかった。このため、経済産業省は7月末、福祉用具の認証機関第1号に、財団法人・日本文化用品安全試験所(本部・東京都墨田区)を選んだ。
同財団はメーカーから申請があれば、書面審査や現地審査を行い、原材料や強度、工場での品質管理状況などを細かく調査。基準を満たせば、JISマークの表示を認める。認証後、最低でも3年に1回、「認証維持審査」を受けることが義務づけられている。村田政光・同財団理事は「品質に問題がなければ、申請から認証まで3カ月程度」と話す。
福祉用具にJISマークの表示を求める声が強まっている背景には、死傷事故の増加がある。経産省によると、製品事故の報告・公表制度が始まった07年5月以降、重大事故は手動の車椅子が3件、在宅向け電動介護用ベッドは1件。このうち3件が死亡事故だった。
例えば07年5月、長崎県では要介護者の足を車椅子のフットレスト(足乗せ台)に乗せようとしてバランスを崩し、車椅子ごと後ろに転倒、要介護者は頭を強く打ち死亡した。同年12月には愛知県で4歳児がベッドのマットとヘッドガードと呼ばれる部品の間に首を挟まれて窒息死する事故が起きた。いずれも原因が製品の欠陥か、操作ミスか特定されていないが、介護保険の特定給付制度の対象品目で需要も増え、高品質の製品を安定的に提供する必要があった。
最近、事故が相次いでいる電動車椅子も認証機関を選定中で、9月にも決まる見通しだ。経産省環境生活標準化推進室の相澤幸一室長は「JISマークが付くことで、製品の安全性が一目瞭然(りょうぜん)で分かる。製品を選ぶ際、安心・安全の一つの判断基準にしてもらえれば」と言う。
自らも車椅子を利用する日本身体障害者団体連合会(東京都豊島区)の山本征雄副会長は「車椅子の場合、高齢者や比較的軽度の障害者で市販品を使える人たちには、安全の確保は朗報だろう。商品として流通させるにはJIS規格化は当然の流れ。福祉用具のJIS化を普及させるだけでなく、例えば車椅子が利用しやすいバリアフリー環境の整備などに力を注ぐことも忘れないでほしい」と注文する。
日本福祉用具・生活支援用具協会の推計では、06年度の福祉用具産業の市場規模は約1兆2300億円。製造企業は手動車椅子が約150社、在宅向け電動介護用ベッドは約30社と見られている。【清水優子】
JISマーク
工業標準化法に基づき、日用品や電気用品など鉱工業製品について、品質や安全性、互換性などを定めた日本工業規格「Japanese Industrial Standards」の略称。メーカーは認証機関に申請後、製品が規格を満たしていると認められればJISマークが付けられる。マークの表示は義務ではなく任意のため、規格を満たさなくても製造・販売はできるが、消費者にとっては商品を安心して購入するための目安となる。
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