変わる介護ベッド

2007年 02月 21日 (水) | Category : 介護用品

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

必要でも保険外 利用制限で混乱


昨年の制度改正で介護保険の給付対象から外された軽度者の介護用ベッドのレンタルが、医師の判断などを条件に、4月から認められることになった。利用制限を巡る混乱をきっかけに、適切な利用のあり方を考える機運も生まれているようだ。(本田麻由美)


眠れない日々


「あの時は、今後どうやって寝ればいいのかとショックでした……」


鹿児島県南部に住む杓瀬(しゃくせ)武雄さん(85)は、使い慣れた介護用ベッドを返却せざるを得なかった昨年秋のことを、伏し目がちに振り返る。


杓瀬さんの要介護認定は「要支援1」。軽度だが、肺に持病があり、数メートル歩くだけで息が切れ、酸素療法を受ける時もある。平らに寝ると呼吸ができないため、2003年から介護保険で介護用ベッドを借り、モーターで背の角度を調節しながら上半身を起こして寝ていた。


昨年4月の制度改正で「要支援1、2」「要介護1」の人の利用が、原則として認められなくなった。介護用ベッドを「楽だから」など安易な理由で利用する軽度者が多く、保険財政を圧迫するうえ高齢者の自立を妨げるとの批判からだ。


「要支援1」の杓瀬さんは「生活する上で介護用ベッドが不可欠」として例外使用を申請したが、認められず、結局、経過措置が終わる昨年9月末にベッドを返却。通信販売で格安品を購入したが、体に合わず、眠れない日もあったという。


早くも見直し


利用制限の対象者の中に、病気の性質から介護用ベッドが必要な高齢者が相当数いるとの調査結果が出たことなどから、厚生労働省は19日、利用制限を緩和する方針を明らかにした。4月からは、主治医と自治体が必要と認めれば、軽度でも介護用ベッドが利用できるようになる。


だが、杓瀬さんと同居する娘(56)は、複雑な気持ちだ。


「また使えるようになるのはいいことだが、こんなに早く見直すのだったら、最初から必要な人には認めておいてほしかった」


一方、軽度者の介護用ベッド利用を巡る混乱をきっかけに、業界内では新たな機運も生まれている。


反省から新商品


一つは商品の多様化だ。以前は「背上げ」「脚上げ」「高さ調整」の3モーターがついた重装備型が中心だったが、モーター数を減らし、価格を30万円台から10万円前後に下げた商品が増加した。


「フランスベッドメディカルサービス」(本社・東京)では、介護が必要になった時にモーターを後付けできる「生活応援ベッド」を開発した。このほか、一部の業者が軽度者向け機種を開発し、低料金の自費レンタルを始めるなど、新たなサービスも出てきた。


もう一つは、福祉用具業界が、レベルアップの必要性を認識したことだ。


福祉用具レンタル「カクイックスウィング」(本社・鹿児島市)の岩元文雄社長は、「安易な利用促進など業界が見直すべき点は多いが、一番問題なのは、どんなベッドがどういう状態の人に適切か、科学的データに基づいた必要度を示す努力をしてこなかった点だ」と強調する。


こうした反省から、「パラマウントベッド」(本社・東京)などのメーカーも、ケアマネジャー講習会などを開いて、自立を促す介護用ベッドの使い方などの情報提供を開始した。


厚労省の外郭団体「テクノエイド協会」の村尾俊明常務理事は、「必要な人が適切に福祉用具を利用できる体制づくりに向け、業界全体で専門性を高めていきたい」と話している。


読売新聞
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