介護用ベッド利用制限

2007年 01月 11日 (木) | Category : 介護用品

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

判断基準実態と隔たり 欠かせぬ適切な供給システム


介護保険制度改正で、要介護度の低い高齢者が介護用ベッドを利用できなくなって3か月が過ぎた。一律的な利用制限には問題がある。(社会保障部 小山孝)


モーターでベッドの上半身部分を起こすことができる介護用ベッドは、起きあがりを楽にするだけでなく、介護する人の負担も減らせる。費用の1割を払えば要介護度にかかわらず介護保険でレンタル給付されたが、昨年4月の改正で、「要支援1」「要支援2」「要介護1」の軽度の人は原則、利用できなくなった。経過措置を経て昨年10月から本格実施されている。


国が利用制限に踏み切った背景には、介護費用の急激な増加がある。ベッドや車いすを含む福祉用具レンタルの総費用は、2001年4月に40・2億円だったが、昨年4月には4倍近い152・9億円に急増した。介護用ベッドは付属品も含めれば、その約6割を占める「人気商品」だ。ベッドの利用者をみると、約4割を軽度者で占めている。


安易な利用が費用の無駄を生み、高齢者の自立を妨げてきたとの指摘も介護現場にはあった。ベッドはケアマネジャーが必要と判断すれば借りられるが、「楽だから」という理由で安易に使用を勧めるケースもあった。都内の事業者が軽度の利用者約300人の利用状況を調べたところ、約半数がベッドの電源を入れずに使っていた。


今回の見直しについて、自治体や事業者の間では、「やむを得ない」という意見が大勢だが、本当に必要な人までベッドを借りられない状況も一部で生じている。


千葉県我孫子市に住むパーキンソン病の男性(80歳、要介護1)は、「病気の性質上、時間帯によって体が動かない。ベッドがなければ生活できない」と訴える。我孫子市が制限対象となった市民約180人を調査したところ、リウマチや変形性膝(ひざ)関節症などを患う約1割の人は、軽度であってもベッドが必要なことが判明した。しかし市が認めても保険は使えないため、自費でベッドをレンタルする際の補助制度を市は創設した。


軽度の人でも利用できる例外はある。要介護度を決める要介護認定調査項目のうち、「起きあがり」「寝返り」の項目を介護用ベッドの利用可否の判定に応用し、いずれかが「できない」と認定されていたら、ベッドは使えるというものだ。しかし、この判定方法では体調によりベッドが必要になる人まで省かれやすく、「判断基準が生活実態を反映していない」と神戸市ケアマネジャー連絡会の神谷良子代表は指摘する。


介護用ベッドなどの福祉用具は適切に使えば高齢者の自立を促す有効な手段になる。しかし、適切に供給するシステムや、安易な利用をチェックする自治体の機能が十分働かなかったことが「乱用」につながった。その反省に立った見直しも、必要な人まで使えないという事態を生んでしまった。国は早急に実態を把握し、必要な人にはベッドが供給されるようにすべきだ。


読売新聞
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