有料老人ホームの選び方/2 「優先順位」決め見学を

2007年 11月 03日 (土) | Category : 介護施設

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

◇「公表情報」じっくり確認


有料老人ホームの情報公表は、介護付きに限ると、昨年の介護保険法改正で大きく進んだ。しかし、詳細情報はインターネットだけの公表で、内容は二十数ページに及ぶものが多いが、他ホームとの比較がしにくく、初めて見た人には分かりにくい。こうした情報を見学や体験入居でいかに深めるかがホーム選びのカギになる。【有田浩子】


東京都は7月、「あんしん なっとく 有料老人ホームの選び方」という小冊子を作成した。市区町村の高齢者窓口で無料でもらえるが、冊子をめくると情報入手先の欄に、「重説」「公表」などと記されている。


「重説」は重要事項説明書の略称で、事業主体、施設概要などが書かれている。各ホームが作成し、内容は都道府県がネットで公表しているものと重なるが、昨年の老人福祉法改正で文書で手渡すことが義務付けられた。契約に至るまで最も重要な情報書類で、パンフレットと併せ見学会までに入手したい。


「公表」情報は調査員が調べ掲載するまで時間を要し、最新情報でないことがあるが、大きく五つに分かれる。


その3番目は「介護サービス従事者」に関する事項。職員の体制は介護付きの場合、要介護者3人に対して介護・看護職員は1人が最低基準で、2・0、1・5など数が小さくなるほど手厚い。


ただ、介護の質はこの数字だけでは即断できない。その際に「職員の前年度1年間の採用数・退職数」がポイントになる。高齢者住宅情報センター(東京都中央区)の山田礼子室長は「半数以上入れ替わっているようなら、見学の際に尋ねてみて」とアドバイスする。


夜間の介護・看護体制もチェック項目の一つ。入所者の要介護度や規模が同程度のホームと比べてみたほうがいい。


4番目の「介護サービス内容」の項目には、協力医療機関が記載されている。ただ、隣接していても土、日は医師がいないこともある。山田室長は「緊急時にどういう対応になるのか、協力病院だけでなく近隣にどんな医療機関があるのか、チェックしておいたほうがいい」と話す。


この項目では、身体の状態が変わった場合の住み替えや契約解除などの条件も記されている。特に、認知症や重度の要介護状態になった場合も住み続けられるのか確認の必要がある。


この他、入居率なども判断のポイントになる。「70~80%が目安」(山田室長)という。また、入居一時金などの費用については、5番目の項目に書かれている。


介護情報誌「ベターケア」編集長の野田真智子さんは「入居するときに何を目標とするのか、なぜ有料ホームを選ぶのか、理由をはっきりさせておく必要がある。ただ最初から固められるわけではないので、ホーム見学をいくつかしていくなかで優先順位をつけていってほしい」と話す。=次回は10日に掲載


◇五感をフルに使って


有料老人ホームを選ぶときはホームの職員の説明をうのみにせず、五感をフルに使うことが求められる。


見学会に行ったら、まず、手すりの位置、トイレ・浴室のプライバシー配慮などはもちろん、ホームのにおい、使っている食器、飾ってある花を見回してみる。見学会を予約する際に、食事も予約できるのか聞いてみるといい。職員や入居者の表情も重要だ。


体験入居では、複数の入居者から声を聞いたり、夜間の職員の対応も見てみる。趣味などの活動、家族や友人が訪れやすいか、地域に開かれているかなど、実際に自分が生活することを想像してチェックしたい。


有料ホームを展開する生活科学運営の八木真寿美広報部次長は「『どう暮らしたいか』という言葉にできない思いをくみ取ってくれる、紹介センターの相談員など第三者の知恵を上手に活用することも必要」と語る。


毎日新聞
現在位置 : Home » 介護施設 / 2007年11月 > 記事詳細