住み慣れた街で通所、宿泊、訪問

市町村で特色 小規模多機能ホーム


介護が必要になっても住み慣れた街で暮らすことを可能にするサービスが、昨年始まった。地域密着型サービスと呼ばれ、「通い、泊まり、訪問」を提供する小規模多機能ホームはその代表格。市町村の裁量が大きく、個性的な事業運営をする地域も出てきている。(小山孝)


「こぢんまり」が魅力


福岡県大牟田市の住宅街にある小規模多機能ホーム「いまやまの家」は、昨年9月、平屋の民家を改築して医療法人が開設した。認知症の高齢者13人が利用し、1日4人まで泊まれる。


昼下がり。約10人がテレビを見たり、花札を楽しんだりしている。昼寝をしていた男性(79)は昨年11月から通い始め、週に6日、日中をここで過ごす。


要介護3のこの男性と2人で暮らす妻(71)は「去年は一緒に死ねば楽になる、とも思いましたが……」と感慨深げだ。


男性が脳こうそくで倒れたのは昨春。秋に退院してから通所リハビリに通ったが、60人もの人が集まる施設になじめず、周囲に暴力を振るった。


だが、こぢんまりした現在のホームに来てからは表情が和らぎ、暴力もない。冬に1か月間入院した際は、その後の1か月間、ここに宿泊した。妻が介護休みで旅行する時も短期宿泊する。「同じ職員が対応してくれるので、夫も落ち着けるようです」と妻は話す。


中には、毎日安否確認の電話をホームからもらう人や、自宅での入浴を職員に手伝ってもらう人もいる。一か所で様々なサービスを提供しているのが小規模多機能の特徴だ。ホーム長の松嶋明子さん(54)は、「あと少しの支援があれば家で暮らし続けられる人は多い」と強調する。


職員もなじみ


人口約13万人の大牟田市の高齢化率は全国平均より約7ポイント高い27・8%。市は2年前から介護事業者との協議会の中で、小規模多機能を推進してきた。地域の拠点とするため、家族会の設置や介護予防施設の併設を義務付ける独自の基準も作成。ホームの管理者が認知症研修を受けることも盛り込んだ。


事業者の理解もあって現在6か所、今年度中には12か所が開設する。「なじみの職員が介護する小規模多機能は認知症の人に向いている。運営には、認知症介護の質を高めようとの意識が欠かせない」と市の担当者は指摘する。


4割に開設計画なし


小規模多機能は現在、全国に703か所。構造改革特区を活用し、障害者の受け入れを可能にしている富山市や福岡県久留米市、150か所もの開設を計画している大都市・横浜市など、地域の実情に応じて整備する市町村も増えている。


一方、介護報酬の低さや人材確保の難しさ、住民の認知度の低さなどから、事業者参入が進まない市町村も多い。人口93万人の千葉市は開設ゼロ。国は中学校区に1か所程度を想定するが、今年3月の読売新聞社の介護保険全国自治体調査では、4割の市町村に開設計画がなかった。


全国コミュニティライフサポートセンターの池田昌弘理事長は、「自治体側に、地域に合ったホームを育て、住民にPRしていこうとの意識が必要だ」と指摘している。


読売新聞
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